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「星くんとついてくん」

 星くんとついてくん 第7巻

 第85話 星くん誕生日記念 星くんとチル

 今日は、星くんの誕生日だ。
 去年の様に驚かせるのはやめて、普通に、仲の良い人だけで誕生日を祝う事になった。
 ついてくん、くりマロン、クリームパン、アスちゃんが来ていた。
 誕生日も終わりに差し掛かった頃、ついてくんが聞いた。
「星くんって、どうして星くんなの?」
「え?何その欧米的問いかけ」
「何で星くんがそんな姿なのか、教えてよ」
「いいよ」

 星くんは、もともとは人間だった(もちろん、その時の名前は星くんでは無かったが、本当の名前はわからない。というか、人間としての記憶は星くんになる直前の事しか残っていない)。
 その頃、人類はついに宇宙のどこまでも行けるUFOを開発した。
 それも、専門知識などが無くても、普通にUFOを買えばそれだけで宇宙旅行にいけるという、宇宙がかなり身近な存在となりかけた頃だった。
 そこで星くんは、弟のチルと一緒にそのUFOを買い、宇宙旅行に出発した。
 しかし、一番安い中古のUFOだったため、途中で現在位置を確認するナビゲーターが壊れてしまった。
 そして、遭難した宇宙船を探すパトロール船が近くを通るのを願いつつ、当ても無く近くを彷徨っていた。
 ところが、多かった食料も底をつき、燃料も半分近くを使い果たしてしまった。
 そこで、エンジンを切り、宇宙空間をフラフラと彷徨う事になってしまった。
 すると、近くに1つの星を発見した。
 もしそこに発達した文明があれば、現在位置を知り、地球に帰る事ができる。
 もし生物がいれば、何とか食料だけでも分けてもらう事ができる。
 植物だけでもあれば、それで燃料を作る事はできる。
 星くんとチルは、急いでその星に上陸した。

 しばらくその星を探索していると、1つの小屋を見つけた。
 星くんとチルは、その小屋に近づいた。
 インターホンも無かったので、扉をノックしてみたが、誰もいない様だった。
 勝手に入るのは気が引けたが、命に関わる事なので、食料か燃料が無いか、探そうと扉を開けた。
 チルは嫌がったので、まず星くんが入る事にした。
 中に、1つの階段を見つけた。地下室があるらしい。
 星くんは階段を恐る恐る降りて、地下室の扉の前に立った。
 意を決して、星くんは扉を開けた。
 すると、パン、パンとクラッカーが鳴った。
 そして、星くんの目の前に、女神が現れた。
 自由の女神に似た感じだった。
 実体は無く、コンピューターホログラムだった。
「おめでとうございます!あなたは、新生ほし族のリーダーに選ばれました!」
「どういう事ですか?ほし族って何ですか?何でぼくがリーダーなんですか?」
「そうですね……。少し、ほし星とほし族について説明しておきましょう。
 この星は、ほし星といいます。
 この星の住人はほし族といい、皆星の形をしています。
 言葉はほとんど使わず、触角から発せられるテレパシーにより無言で会話をします。
 ほし星には、優れた技術と文明があり、とても豊かでした」
「でした、とはどういう意味ですか?」
「ほし族は──絶滅しました。自らの手で」
「どういう事ですか?」
「ほし族は元々友好的な種族で、ほし星も平和な星でした。
 しかし、科学技術は戦争に使われ、地球という星などと同じ様に、核兵器が作られました。いや、もっと恐ろしい兵器もです……。
 その兵器を使った結果、ほし族は皆滅びてしまいました。
 残ったのは、ほし族が復活するためにプログラムされた、私だけです」
「あなたは、一体何なんですか?」
「私は、ほし族に作られた、いわゆるロボットの一種です。
 もしほし族が滅びたら、私が作動します。
 新たにほし星に来た最初の50人を、ほし族に変えるシステムです。
 このシステムがあれば、ほし星とほし族は永遠に滅びず、何度でも復活できます」
「って事は──」
 星くんは自分の体を見た。
 人間だったはずの自分の体は、黄緑色に染まり、星型になっていた。
 赤色の触角も生えていて、なぜか動かそうと思えば動かせた。
「──ぼくが、その50人の1人なんですか?」
「ええ。あなたはその1人です。それも、最初の。そして、あなたの弟さんが2人目ですね……」
「……つまり、ぼくはほし族の代表として、ほし星を繁栄させる義務がある。こういう事ですか?」
「ええ」
「残念ですが、それはお断りします」
「どういう事ですか!?」
「ぼくは、人間として地球で暮らしたい。この全く知らない星で生きるのは、嫌です」
「──そうですか……。あなたは、ほし星とほし族のリーダーとしての名誉を捨てるというのですね?」
「ぼくが欲しいのは、派手な名誉ではなく、ささやかな幸せです」
 星くんは、そう言ってから、その言葉を後悔した。
 女神の目が赤く光り出した。
「お前は反逆者だ!」
 女神が叫んだ。
「お前をほし星から追放する!ほし族が集まったら、その時は……」
 その時はどうするのか、星くんはわからずじまいだった。ちょうど、チルが部屋に入ってきたからだ。
 すると、チルの体もみるみる星型になった。
 体の色は赤く、触角は青い。
「お前の記憶を消し去り、宇宙空間に放り出してやる!」
 チルの事を無視して、女神が叫んだ。
 星くんは、とっさに地下室を抜け出し、そのままロケットに逃げ込んだ。
 ほし族になったため、優れた知能と技術を手に入れた星くんは、ロケットのナビゲーターを直し、地球へと帰った。

 地球に帰ったが、星くんは人間に戻ることもできなかった。
 さらに、人間のときの記憶のほとんども失っていた。
 また、テレパシーも使えなくなっていた。
 あの女神が、呪いをかけたのではないかと、星くんは思った。
 星くんは、特殊系の街で暮らす以外に、道は無かった。
 こうして、星くんは0歳として、特殊系として新たな人生を送る事になった。
 ほし星とチルがどうなったのか、星くんは知らない。
 チルは、星くんを追いかけなかった。
 チルは、その状況を瞬時に理解していた。というより、女神が星くんに叫ぶと同時に、テレパシーを発してチルに状況を教えていたらしい。
 しかしチルは、逃げなかった。ほし星に残る道を選んだ。
 だから、星くんも、チルを無理やり連れ帰ろうとはしなかった。チルがそう選択した事を、悟ったからだ。
 でも、星くんは、心の底で、チルの事を、想っている。
 そして、チルも、星くんの事を、想っている。
 たとえどんなに離れていても、心はいつも一緒だから──。



 第86話 ついてくん誕生日記念 ついてくんの危険な一日

 今日は、ついてくんの誕生日。
 しかし、星くんは研修で夜まで名古屋にいる。
 ついてくんは、お留守番を頼まれていた。

「あ〜、暇だ〜。神様が天界に招待するメールでも送ってくれればな〜」
 一時期さかんに使われていたあの某タヌキマンガのパクリ道具は、ワープと違って天界でも使う事ができるため、犯罪の助長になる、と天界の神議会によって非合法とされた。
 そのため、先月神様が破壊に来た。
 現在では、改造されたついてくんたちの携帯へのメールからのリンクによってワープする事ができる。
 そこをクリックすると、携帯に不思議な魔力が宿り、持ってる人・及びその人に触れている人は天界のアテリア城までワープできるのだ。
 もちろん、このリンクは一定時間をすぎれば効力を失うため、ついてくん側から天界へ向かうのはできなかった。
「ま、そんな事もないだろうし、冷蔵庫でもあさるかな……」
 ※冷蔵庫を開けるのは星くんに禁止されてます。昼食はアスちゃんが届けに来てくれます。
「あ、きっと今日のためのホールケーキがあるだろうな!」
 しかし、去年と同じ失敗を星くんが繰り返すわけも無く……。
『ケーキは帰りに買って帰ります。大人しくしないのならアテンドにあげます。星くんより』
 冷蔵庫の中にはこんな紙が貼ってあった。
 中身はもちろんすべて鍵つきのケースに入っている。
「……まあ、これはもう仕方ないかな……」
 これがついてくんの1年間の成果である。その過程にどんな事があったかはわからないが。
 その時、携帯が突然鳴り出した。
「あ、メール来てる♪神様からだったらいいな……」
 神様は天界では思う存分ついてくんを甘やかしている。
 星くんと神様は、もうかなり打ち解けた関係になっているようで、星くんにいつも怒られている。
 実の父なのに、ほぼ祖父扱いである。
 さて、メールの内容はこうだ。
『ついてくんさん誕生日おめでとうございます。
 うちの息子がいつも迷惑をかけていて、すみません。
 ぜひ、これからもよろしくお願いします。
 ニードの母』
「……あいつ、ぼくのメアドなんで知ってんだ……そしてお母さんに教えんなよ……」
 しかし、メールはもう3通ほど入っていた。
 1通はトリン&サニーからの英語のお祝いメール(翻訳サイトに打ち込んで読んだ)。
 2通目はダイレクトメール(小学受験を考えているあなたに、一流の家庭教師がコツを伝授いたします!体験費無料!)。
 3通目は、ゴッドからのメールだった。
「やった!」
 急いでアドレス(atelia.warp.hw/god.co.jp/help)をクリックして、天界に向かった。

「ついてくん、よく来てくれた。ではさっそく準備をしよう……」
 ゴッドが淡々と言い、突然屈強な兵士が10人ほど現れ、ついてくんは戸惑っている。
「え?何の事?」
「実はな……お前には破壊の力が宿っているんじゃよ。もともと、天界の血と霊界の血は、絶対に混ぜてはいけないものじゃったのだから……」
 その言葉に、ついてくんはますます困惑した。ゴッドが続ける。
「お前の力が解放される期限は、生まれてから2年なんじゃよ。これ以上お前をほうっておくわけにはいかない。止める方法は……」
 ついてくんはぞっとした。意味はわからなかったが、自分が危険なものである事だけはわかったのだ。
「そんな!今日は……」
「お前の誕生日だ。そして……絶命日になるかもしれない」
 10人の兵士は、抵抗するついてくんを無視してついてくんを城の地下へと運び込んだ。

「ん!?」
 会議中の星くんに、アスちゃんからメールが届いた。
『ついてくんがいない。携帯も音信不通』
「あの……すみません」
 会議中に勝手に発言など、普通は絶対に許されなかった。
「今すぐここを抜けてもいいですか?急用ができたんです」
「メールをしていたのか!?」
「いえ、テレパシーです」
 星くんは確実に今まで以上に怪しまれるであろう言い訳をして、会議室の天井をジャンプして突き破ってそのまま街へと帰っていった。
 その様子を、星くんの上司たちは呆気に取られてみていた。

「ここから出して!出してよ!」
「それはダメだな。なぜなら……」
 見張りの兵士が、顔……と思われていたマスクを剥がした。
 中から現れたのは、あの人物だった。
 過激派教団を指揮して、全世界の侵略を企んだ、最強最悪の男。
「ファウス!?」
「ああ。ゴッドはおれが操っている。あいつを操れば、天界は手に入れたも同然だからな」
「でも、ゴッドの魔力に勝てたの!?」
「あいつは、お前の誕生日や、天界での犯罪続出などで、手一杯だ。少しずつ操るようにすれば、抵抗できない。いつもなら、途中で気づいたはずだけどな……」
 そういって、ファウスはまたマスクをつけた。
「お前は邪魔者だからな、これでお前をゴッドに殺させれば、この世界を落とすのも簡単だな。ついでに、お前の死はこしゃくな特殊系のやつらにも精神的な大ダメージを与えられる。我に返ったゴッドにも。そうすれば、楽勝だ」
「くっ……」
 その時、誰かが叫んだ。
「スターブラストχ!」
 星くんだった。
 牢屋の壁は壊れ、ファウスが吹き飛んだ。
「くそっ、何でここにいるとわかった……!」
「アスちゃんがついてくんがいなくなったってメールを送ってくれたから、バイトを抜け出してきたんだ」
「くっ、おれだってバイトを抜けてゴッドを操ってたのに」
「知るか!とにかく、お前は見つかったんだ!負けだ!」
「……そんなわけないだろう。お前は勝てない!ファウスバーストα!」
「スターショットβ!」
「あの、2人とも古代文字つければ進化したっぽくなると思い込んでない??」
「黙れ!!」
 2人が同時に叫び、2人の攻撃が一気についてくんにヒットした。
「……よくもやったな!!スピリチュアルビックバーンδ!」
 ついてくんが2人に向かってぶっといビームを放った。
「……お前もじゃ……ねーか……」
 城の地下室は吹き飛んだ。
 ファウスも吹き飛んだ。
 星くんも吹き飛んだ。
 特殊ガードが無視されるほど強かった。

「はあ、危うくついてくんを殺してしまう所だったよ。ありがとう、星くん」
「いえ、別にぼくは……」
「あ、ところで城の修繕費は払ってくれよ」
「え……?」
「今天界は財政がやばいんじゃよ。1億円な」
「あ、そういえばケーキは??」
「あ!忘れてた!」
「そういえばアルバイトはどうしたの??」
「そりゃ、抜け出してきたんだよ……あ!」
「何?」
「あの会議室も修理しないと!!」
「……頑張ってね、星くん」
「地下室壊したのお前だろ!お前もバイト手伝えよ!」
「……借金増えるだけだけどいいの?」
「誕生日2回も迎えたんだから少しは成長しろよ!」
「そんな事にならないから続編が出せるんでしょ?この話の売りは『わがままなおばけと冷静な星の駆け引き』なんだよ?」
「もうこの話は終わったんだよ!成長しろ!」
 ……こうして、ついてくんの誕生日は……。

 ……夜が明けるまで続く虚しい争いによって、ケーキどころか夕食も食べないまま終わってしまうのであった。



 第87話 コンセンくん誕生日記念 コンセンくんの不幸な誕生日

 ※この話では、とてつもないパクリが結構含まれています。
 本当にすみません。

 9月3日、午前7時。
 今日はコンセンくんの誕生日。
 もちろんコンセンくんの友達が皆でお祝いをしてくれる……
 ……は…はずだった!
 ところが……。
星「ついてくんと2人で伊豆へ旅行に行く」
栗「某ネズミ王国で遊んでくる!」
ク「上に同じ!」
ア「アイス作りの研修で2週間世界旅行にいってくるね〜☆」
ス「パン作りの研修でアスちゃんと一緒に行ってきます。フューチアたちも一緒です」

 というわけで、コンセンくんは孤独だった。
「誕生日なのに……誕生日なのに……アスちゃんにすら忘れられるなんて……」
 ※第77話みたいなドッキリではなく、本当に行きました☆
「気を紛らわすために、外にでも行こう……」
 外に出た瞬間、コンセンくんの頭に鳥が空から誕生日プレゼント(置き土産)をくれた。
「……死のう……」
 コンセンくんは、くりマロンの家の近くの湖のほとりに立つと、息を深く吸い込み、飛び込んだ。
(これで安らかに眠れる……やり残した事は…………)
『コンセンくんが死んだおかげでポチもフューチアも一緒に暮らせますね』
『ま、いっか☆』
(やり残した事……)
 復讐。
(あるなぁ!!)
「助けてー!」

 9月3日、午前8時。
 気がつくと、コンセンくんは小さなマンションで寝ていた。
「おお、気がついたか」
「たまじいさん!ありがとうございます!」
 その呼び方はどうかと……。
「ありがとう。ついでと言っては何だが、君の一番ほしがっているものをあげるよ。何がほしいかね?」
「えーと……ダガーナイフと伊豆行きのチケットですかね」
 すると、突然たまじいはポケット(?)から長いダガーナイフと新幹線のチケット(伊豆行き)をくれた。
「偶然持っていたんだよ」
「あ……ありがとうございます!!」
 そういって、コンセンくんはたまじいの家を飛び出した。
 ちなみに、たまじいの想像はこんな感じだ。
(きっと伊豆でコンセンくんの知り合いの結婚式でもあるんだろう。ケーキを切るナイフを用意する役なのだろう。
 ん?そういえば、星くんとついてくんが伊豆に行っているらしいな。
 ってことは、あの二人であんな事やこんな事に……)
 ……以下、検閲により削除。

 9月3日、午前11時。
 コンセンくんは、ついに伊豆に到着した。
 二人が行く予定の所は知っていて、順調にチェックインした。
 とりあえず、1時間くらいゆっくりしようかな……と、コンセンくんは思い、部屋に荷物を置いて廊下に出ようとしたその時……。
「はあ〜、今日で旅行も終わりだね〜」
 聞きなれた声がする。
 コンセンくんは急いで部屋に戻って聞き耳を立てた。
「そうだけど、3日も遊んだんだから、いいじゃん」
 さらに聞きなれた声がする。
「そだね」
 ドアの鍵穴から見てみると、思った通り、星くんとついてくんだった。
(ついに見つけた……)
 コンセンくんの手には、銀色に輝く鋭利な刃物があった。

 9月3日、午後1時。
 満腹になったついてくんは、ブーケトス……ではなく、温泉に入っていた。
 もちろん、星くんも一緒だ。
 今まで鬼ごっこや主役を賭けた争いなどで一度も勝てなかった(小説第51話除く)コンセンくんは、じっと我慢して温泉の岩の影に隠れてチャンスを伺っている。
「ねえ、星くん」
「何?」
「何か忘れてる事がある気がするんだけど」
「気のせいだよ」
 ※星くんとコンセンくんは幼なじみです。
「誰かの誕生日とかは?」
「え〜……ないと思うけどな〜……」
 ※星くんとコンセンくんは幼なじみ……だと思います。
「本当に?」
「うん、ないよ☆」
 ※……たった今、コンセンくんは幼なじみをやめました。
 これで、コンセンくんがその復讐をやめるチャンスはゼロになったと思われたが……。
「あ!思い出した!」
「何?」
「コンセンくんの誕生日だ!!」
 ※たった今、コンセンくんは友情を復活させました。
 しかし……。
「まあ、どうでもいっか☆」
「そうだね☆」
 …………ぷちっ
 ※たった今、コンセンくんは友情を破壊しました。
「死ねー!!!」
 怒りに我を忘れたコンセンくんが飛び出してきた。
「え?コンセンくん?何でここに?」
「食らえ!コンセンサンダースラッシュ!!!!!」
「スピリチュアルウォール」
 ついてくんが事も無げに壁を作った。
 電撃は消され、コンセンくんの勢いも止まった。
「スターショット」
 星くんが微動だにせずに星を放つと、コンセンくんは気絶した。
「さあて、そろそろ出ようか」
「そうだね」
 …………。

 午後1時20分。
 コンセンくんが目を開けた時、当然二人はいなかった。
 こうして、コンセンくんの復讐は失敗した……。
「いや!まだまだ!次はあの栗たちを倒しにねずみ王国へ乗り込んでやるぜ!」

 午後4時。
 約6000円という高い入場料を頑張って払ったコンセンくんは、くりマロンとクリームパンを探した。
 10分後。
 見つかった(奇跡)。
 大雷山の英語読みで遊んでいた。
「死ねー!!!コンセンサンダースラッシュ!!!!!」
 しかし、コンセンくんは忘れていた。
 ここは、大人気の遊園地ディズニーランド。
 いくら夏休み明けだからといって、人は結構いるわけなのだ。
 つまり、そんなところで雷なんてやったら、一般人&ディ●ニーの被害は凄まじいわけで……。

「I dislike the selfishness. Therefore I have you carry the debt of 10,000,000 dollars paid this time」
「………はい?」
「『私はわがままは嫌いだ。だから、今回出た1000万ドルの負債は貴様に負わせる』と申しております」
「………えーと……それは何の冗談でしょうか?まさか大雷山の修理に10億もかかるわけはないでしょう?」
「Bi● Sa●der Mo●ntai● was not usable because of you for two weeks, and the person of some was hurt more. I want the truth 100,000,000 dollars」
「『君のせいでビッ●サ●ダーマ●ンテ●は2週間使えなくなり、さらに何人もの人が怪我をした。本当なら1億ドルほしいくらいだ』と申しております」
「You don't cost even the insurance of the same sum」
「『貴方には、同じ額の保険金すらかかっていない』」
「Work till I can return the same frame here. To total amount return, it takes 40 years. Meanwhile, there are no all in a holiday and the salary」
「『ここで同じ額返せるまで働け。全額返済までは、40年かかる。その間、休みや給料は一切なしだ』」
「嘘だぁアアアーーーーー!!!そんなに払えないよぉおおーーー!!!!ウワァアアーーー!!!!!」
 コンセンくんは、今日を持ちまして特殊系の街を永久追放(サヨナラ)ですw

 9月6日、午後11時。
 ひっそりと闇に包まれた夢の国から、コンセンくんは人知れず脱走した。

 9月6日、午後11時1分。
 脱走を目撃した警備員の通報によってその事実を知った総司令官により、ディ●ニーの威信をかけたネズミの特殊部隊による大規模な捜索が行われる事となった。
 それ以来、コンセンくんはディ●ニーに追われる身となるが、それはまた別の話。
 あと、コンセンくんはネズミ恐怖症にもなるが、それもまた別の話。



 第88話 くりマロン誕生日記念 くりマロンの苦悩

 今日は9月9日、くりマロンの誕生日。
 といっても、すでに誕生日の話も本編時間枠・誕生日スペシャルの両方を合わせるとすでに6回目となり、ネタが尽きたため(いきなり裏話)、何事も無くふつーに終わった。

 その夜、くりマロンはベッドで寝ながら考えていた。
「何か拍子抜けしちゃうな〜……親の裏切りとか、友達への復讐とか、そういう事件でもおきてくれないとな〜……」
 確かに、そうでもしないと、確実にくりマロンの誕生日スペシャルは『ついてくんの手紙』(第85話に入る予定だった最終回の後日談)のごとくカットされてしまう。
「そ、それだけは避けないと!第85話であれだけ誕生日スペシャルを楽しみにしていたのに、何もおきないなんて、それはだめだ!!えーと、事件が起きるあてでもないかな〜……」

「え?くりマロンを誘拐しろ?」
「ああ。そうすれば事件になるだろ?」
「断る!ネズミだけじゃなく警官にまで追われるのはごめんだ!」

「お願いだから、おれを誘拐してく……」がちゃっ。
 つー、つー、つー。

「事件は起きないか……
 ん?待てよ……」
 くりマロンは名案を思いついた。
「起きないなら……起こせばいい……」

 今は夜中の11時半頃。
 星くんは、いやな予感がして目が覚めた。
「気のせいか……誰もいないよな……」
 そういって、またベッドに戻り、……すぐにまた飛び起きた。
「誰もいない!?」
 ついてくんもいなかった。

 ついてくんを誘拐して樹の上に立てこもったくりマロン。
「これで少しは稼げる!!」
 発信機から電波を辿って星くんが駆けつけた。
「ついてくんを返せ!」
「断る!返して欲しければ、即刻この小説のタイトルを『くりマロンとモンブラン』に変えろ!」

 ***ここから裏***
「あのー、作者さん?」
 何ですか?
「ここは一つ、次回の90話記念長編で『くりマロンとモンブラン』を……」
 無理です。モンブランとか意味不明です。
「あ、ちょっと!!」
 ***ここから表***


「というわけで無理だ!諦めろ!」
「何が『というわけで』なんだよ!!」
 ※裏話は星くん以外には聞こえていません。
「うるさい!「モンブラン」とか意味不明なんだよ!」
「黙れ!そんな事言うなら「ついてくん」の方が意味不明だろ!」
 言ってはいけない事を言ってしまいましたね☆
「……誰が意味不明なの?」
「え?」
「天界武装!インフィニティスラッシュγ!」
「ぎゃあーーー!!!」

 こうして、くりマロンの誕生日は、結局ボコされるだけで終わると言う悲惨な結末だった。

「何か、今回の話適当じゃない?」
「仕方ないよ、もう誕生日ネタは尽きたんだから」
「あれ?じゃあ、次の誕生日は……」
「もっと適当になるんじゃない?」
「誰だっけ?犠牲者……」
「「……クリームパン……」」
 久々の楽屋オチ♪



 第89話 クリームパン誕生日記念 クリームパンの挑戦

 クリームパン。
 10月6日生まれ。
 主役になった話は小説88話中1話(クリームパンの夢)。
 くりマロンとセットなのが普通。
 中身はアンコだがクリームパン。
 他に特徴らしき特徴はない。

 ……と、書かれるのが普通である。
 まるでどっかの執事コメディーのハムスターのごとく。
 その状況自体がクリームパンの悩みなのだ。
「どうすればいいんだー!!」
「「うるさい!!!!」」
 クリームパンが叫ぶと、すぐに両隣から怒鳴られた。
 クリームパンは現在防音の欠片もないボロアパートに住んでいる。
 両隣がお節介なおばさんのため、少しでも変な事をするとダブルで怒鳴られるのだった。
 確実に「うるさい!!!!」の方がうるさかったが。
「……どうしよう……」
 主役の話が全く無かったクリームパンにとって、誕生日記念のカットだけは避けなくてはならないのだ。
「事件を起こしてもくりマロンと被るし、復讐してもコンセンくんと被るし、誕生の経緯は星くんと被るし……」
 まさに八方ふさがり。
 誕生日パーティーも執り行われるのだが、そこで何か起こるとも思えない。
 そんな事を考えているうちに、ついてくんたちが来た。
「ケーキ買ってきたよ〜」
「っていうか、パンがケーキ食べるって変だよな」
「栗が言うな」
「あ、そうだ!クリームパン、誕生日プレゼント何がいい?」
「それは……この作品で主役になる権r……ぐはっ」
 言い終わる前に星くんに殴られた。
「却下だ。アンパンを主役にしたら著作権の問題で作品ごと消滅するわ」
「じゃあ、次の長編で主y……げほっ」
「ふざけるな。オリジナリティゼロのパンで10ページ越えなど不可能だ」
「じゃあ、せめてこの話を長編n……がふっ」
「何度も言わせるな。所詮お前の誕生日なんてくりマロンと同じ5ページが限度だ」
「「それがまずおかしいんだよ!!」」
 くりマロンとクリームパンが同時に叫んだ。
「コンセンくんみたいな激脇役が10ページも取ったのに、おれたちがその半分なんてひどすぎるわ!」
「あれは偶然だよ」
「偶然だったのかー!?」
 次々と脇役を敵に回す星くん。
「おれたちの出番をふやせ!」
「そうだそうだ!」
 脇役の大反乱が始まった。
「お前らなんか脇役だろ!悔しかったら主役になるだけのクオリティとアイデンティティとロイヤリティを手に入れて見やがれ!!」
「いや、ロイヤリティはいらないと思うよ」
 なぜか冷静に突っ込むのはついてくん。
「とにかく!お前らが主役の長編とか、確実に却下!」
「なら……!」
「どうした?」
「『脇役の大反乱』というタイトルで90話長編を手に入れてやる!」
「賛成だ!星つい!勝負だ!!!」
「それならいいけど……たぶん91話からだろ」
「何で?」
「90話の長編は天界の過去話で予約済みだから」
「何だと!?時系列的にそっちが後回しだろ!」
「長編は作品本来の時間軸(第85話終了直後)に戻るらしいから、本来の時系列的にはこっちの方が全然後だぞ」
「やめよ、そんな読者を混乱させるような矛盾の大量発生は」
「デリバ●ドの大量発生よりましだろ」
「パロディを否定するのはだめだって!」
「……とりあえず、星くんとついてくん、勝負だ!」
「いいけど、91話ね」
「………」
 こうして、主役vs脇役の直接対決は91話に持ち越されることとなった。



 第90話 小説90話記念長編 神様最大の危機!?

「神様〜♪遊びに来たよ〜♪」
 星くんとついてくんは、2人で天界に遊びに来ていた。
「またか……どうやってここに来たんじゃ?」
「もちろん、『どこにでもドア』だよ☆」
「………」
 神様は少し困っている。
「仕事の邪魔になるんじゃが……」
「仕事?神様って仕事あったの?」
「あるにきまっとるじゃろ!!!」
「ふうん……」
 2人が仕方なく帰ろうとした時、突然ブザーが鳴り響いた。
『セキュリティシステムを終了します』
 そんなアナウンスとともに電気が消え、セキュリティがの電源が落ちた。
「!!何これ!?」
「これは……アテリア城のセキュリティシステムの主導権が何者かに奪われたな」
「ってことは!?」
「アテリア城には誰でも入れるし、監視カメラや警備ロボもすべて相手に奪われたな」
「……でも、こんな事をするやつって、1人しか思い浮かばないんだけど……」
「ああ、ファウスか」
「しつこいね、あいつも」
「だが、ファウスの目的は復讐だから、邪魔をしなければ危害は加えないはずじゃ。むしろ誘き出して、何とか説得できればいいんじゃが……」
 そういうと、神様はその場に座り込んでしまった。
 星くんとついてくんもそれに習って座った。

「……え!?強盗グループがアテリア城に入って、兵士を3人殺して財宝まで奪われた!?!?」
 神様が、ファウスがやったと確信したのは間違いだったのだ。
「まずいのう……」
「何が?」
 ついてくんが聞いた。
「アテリア城の責任者はわしじゃから、わしにこの事件の責任がある……しかも死傷者まで出たとなると……」
 確かに、神様の責任は大きいだろう。
「……それじゃ……」
「ああ。最悪の場合、辞任、という形をとるしかない」
「そんなぁ……」
 3人とも、絶望を感じていた。
 そして、犠牲者を心から可哀想に思った。

 神様は神議会に出席して、今回の事件に関する答弁を求められた。
 しかし、言い逃れのできない、一方的な神様のミスという事で、状況は良くなかった。
 神議会でも神様を即座に解任すべき、という強硬派が多かったが、一つ問題が残った。
 今神様が辞任した場合、後継者となるのはついてくんかサクシアとなる。
 ところが、ついてくんもサクシアも子どもだ。
 このままでは、神様不在の状態になってしまいかねない。
 そうなっては魔界から攻められる危険性も一気に増す。
 かといって、これから1年以上続く可能性もある裁判の間、ゴッドが神様の座に居座るのはおかしい。
 そこで、神議会で激しい議論が繰り広げられた末、こんな結論が出された。
「魔界には、今まで通りゴッドが神様である、という情報を流す。
 ただし、ゴッドは今まで通りアテリア城で神様としての仕事をする事を禁じ、アテリア城は神議会の代表が一時的に住む。
 そして、しっかりと裁判に決着がつくたら、その時こそゴッドの進退をはっきりさせよう」
 それは、今まで出たいくつかの案の中で、もっとも現実的にいい案だったので、その案が成立した。
 ゴッドは、表向きは神様としての仕事の過労で倒れたためミリアの別荘で療養、という事となった。
 もちろん、謹慎処分であるのは言うまでもない。

 それ以来、ゴッドの話題は天界ではほとんど口にされないようになっていた。
 新聞やテレビ、雑誌ではゴッドの引退が濃厚であるとされていたし、インターネットでも誹謗中傷は避けられなかった。
 ついてくんたちにも、自分のところには来ないでほしい、というメールを出し、ホリアやサクシアとは一緒に住んでいるものの食事も自分の部屋でして、ほとんど顔を合わせないようにしていた。
 ゴッドが悶々と部屋の中で考えていると、背後から気配がした。
「ついてくんか?来ないでと言ったはずじゃ……」
 そういいながら振り返ったゴッドは、唖然とした。
 目の前にいたのは、ファウスだったからだ。
「どうだ?ゴッド。敗北の味は」
「ファウス……あの事件を仕組んだのはお前だな?」
「……最初から、勘付いていたんだろう。なぜ言わなかった?」
「今さらお前のせいにはできないよ。あんな事の後で、お前の名前を出したところで、信用してもらえるなどという甘い期待は抱いていない。
 それに、私はお前を責めるつもりも、逮捕するつもりもずっとなかった。
 お前も、知っているだろう?」
「やはり、さすがだな、ゴッド……いや、フォル」
 フォル、というのはゴッドが神様になる前の名前だった。
 神様に選ばれたものは必ず、ゴッドというのをファミリーネームにつけるのだ。
 そして、神様を引退すると同時に、そのファミリーネームを返還するのが天界のしきたりとなっていた。
「もう、その名前の方がいいかもしれんな。
 お前と話していると、あのころを思い出すよ」

 それは、まだゴッド……もといフォルとファウスが子どもだった頃。
 常にファウスは成績優秀だった。
 しかし、常に2位だった。
 もちろん、1位はフォルである。
 ファウスはフォルに勝てない事を常に悔しがっていた。
 幼い頃は、遠縁の親戚という事でよく遊んでいたが。
「フォル!勝負だ!」
 ファウスのそんな言葉を、フォルは何度聞き、そして何度勝った事か。
 そして15歳になったある日、ファウスは突然フォルの前から姿を消した。
 そして、50年の月日が流れた。
 ファウスは禁断の魔法を使う事で永遠の若さと膨大な強さを手に入れ、引き換えに天界の血を少しずつ薄めていた。
 そして、先代の神様がついに亡くなった。
 フォルが神様に就任する事が確実とされていたが、それを快く思わない連中もいた。
 そのうちの1人が、幼い頃に姿を消したフォルと同世代の親戚の1人であるファウスを捜し当てた。
「ぜひとも、君には神様になってほしい……!」
「どうしてですか?」
「フォルは生ぬるいのだ。フォルは天界、霊界、魔界の友好関係を築いて、最終的には全世界の行き来を自由にして、完全な統一を図ろうとしている」
 ファウスは、フォルならやりかねないと思った。
「だが、天界が魔界のような下衆と分かり合えるわけがないのだ!
 魔界に乗っ取られないためにも、強いリーダーシップを持った神様が必要なのだ!」
 ファウスはしばらく考えていたが、やがてこういった。
「わかりました。私が、フォルに勝って見せます」

「だが、私はお前に勝てなかった……」
「なぜだか、わからないんだろう?」
「ああ。だが、そろそろ私はお前に勝てそうだ」
「……どうしてだ?」
「お前は、ここから出られない。
 あのおばけは、お前がこっちに来るなと言ったから、来ない。
 天界を乗っ取るのに、これ以上いいタイミングがあるか?」
「……そんな事はさせんぞ」
「そうか?今まで30年ほど一生懸命働いてきたお前の事を、一度のミスで追放しようとした神議会を潰したいと、思わないのか?」
「私は、実力行使は好まない主義だからな」
「……世の中には、力がないとどうしようもない事の方が多いんだよ!光だけ見てきたお前にはわからないだろうがな!!」
「どういう意味だ?」
「常に勝利の栄光を手にしてきたお前には、常に敗北の闇を見てきた気持ちなんてわからないだろうよ!
 どうせお前の輝く人生の中で、一度謹慎を受けた事が唯一の汚点になるんだろう?
 常に敗北を味わい、50年間ただお前を超えたいがために努力を重ね、それでも勝てなかった私の気持ちなど、お前のような勝ち組にはわからない!!」
「ああ、私にはお前の気持ちはわからない。
 だが、お前がなぜ50年間の努力でさえも私を超えられなかったかは、わかるぞ」
「…何だ?」
「お前の努力は、すべて間違った方向に向いていた。ただそれだけの事だ」
「そんな事はない!私はあらゆる能力で、お前を超えた!」
「なら、どうして神様に選ばれたのは私だった?
 それは、お前の考え方、価値観が、認められなかったからだ!」
「…くっ…だが、そんな事はどうでもいいんだ。
 私はお前を身動き取れない状態に陥れた。
 そして今、私はお前を超えて、神となる!」
「……そうか。なら、仕方がない。
 平穏ばかりの日常など、ありえないからな」
 ゴッドが手を前に突き出すと、巨大な光の玉を打ち出した。
 ゴッドの部屋はとても広い上、ほとんど生活には使われていなかったし、今のゴッドは部屋に物を持ち込もうとは思わなかったので、かなり広いスペースがあった。
 しかもかなり優れた防音機能もあったので、戦いをしても問題はない。
「ダークブースト!」
 ファウスが影を動力に動きを加速させ、光の玉を避けるとゴッドに突進していった。
 ゴッドはすぐにバリアを張り、ファウスが衝撃で止まった瞬間に鋭く拳を突き出した。
 ファウスは痛みによろめいたが、すぐに魔法で癒し、火の玉を打ち出した。
 ゴッドはそれを一瞬にして蒸発させ、続けて衝撃波を打ち出した。
 ファウスも真空波を打ち出して対抗する。
 2人の攻撃はぶつかりあい、すさまじい風を作った。
 ファウスがその風に乗って上昇し、ゴッドめがけて巨大な黒い結晶のような塊を投げつけた。
 ゴッドはそれを片手で受け止めると、もう片方の手をすばやく突き出してその塊を押し返した。
 ファウスはそれを衝撃波で粉々に砕き、ゴッドの方へと無数の刃を降らせた。
 ゴッドはとっさに避けたが、ファウスはその隙を見逃さずに巨大なエネルギー弾を放った。
 その大きさにゴッドは敵わない……と思われたが、ゴッドは見事なタイミングでカウンターを利用し、エネルギー弾を倍の大きさにしてファウス側へと打ち返した。
 完全に勝利を確信していたファウスは避けきれず、弾をもろに食らった。
「私の勝ちだな」
「いや、私の……いや、私たちの勝利だ」
「どういう意味だ!?」
「バジルとヴィーナス、それにグロアード親衛隊がすでにアテリア城を占拠している。
 ジュピターとフェニスはミリアを支配しようとしているところだ。
 お前がアテリア城へと向かわず、私と戦いを始めた時点ですでにわれわれの勝利は決まっていたんだよ」
 そういうと、ファウスは痛みを抑えてワープし、消えた。
「ファウス……私はいつも正々堂々戦っていたから、お前のように罠を仕掛けられなかった……私が、お前に勝てない所だな……」
 ゴッドは独り言を呟いた。
「だがな、ファウス……私は、『結束』の強さを知っているぞ……」

『アテリアは順調に占領できています。アテリアは厳重に取り囲んであるので、逃げ出せません。
 あとはアテリアの住民を人質に神議会を潰せば完了ですね?』
「ああ、その通りだ。くれぐれも頼んだぞ、バジル」
『こちらフェニス。ミリアの中央部に位置する塔を占拠しました。
 ミリア全体へとファウス教団のメンバーが広がっています』
「そちらも順調のようだな、信用しているぞ」
『光栄です』
 ファウスはバジルとフェニスに連絡を取っていた。
「あとは、私がアテリア城に入り、そこでアテリア城の支配を宣言すれば、われわれの勝利は決まる」
 アテリア城を占拠し、ついでにアテリアの住民を捕らえる。
 アテリアの住民を人質に、ディアにある神議会を潰す。
 さらに別部隊がミリアを選挙し、天妖聖議会を潰す。
 これで、天界の三権分立に基づく三権をすべてファウス教団が押さえた事となる。
 すでにアテリア城と天妖聖議会は手中にあるのだ。
 ファウスは、今度こそ天界を自分のものにできたと確信した。
「アテリアには着いた……ん!?」
 ファウスはアテリアを上空から眺めて、絶句した。
 アテリアの群集が、次々とアテリア城に入っていくのだ。
 それも、流れがかなり速い事から、人質として、ではないだろう。
「バジル!何があったのだ!?」
『申し訳ありません、ファウス様。民衆たちがいっせいに反乱を起こして……どうやら、アテリア城近くに住んでいたアテンドというやつが率いているようです』
「アテンドか……なら、そいつだけでも捕まえれば……」
『それが、あまりに人数が多すぎて……』
 首都であるアテリアを狙ったのが失敗だったのかもしれない。
 大勢はまとまりにくいが、その分まとまった時の強さは計り知れない。
「くっ……」
 そのとき、ファウスに別の人からの連絡が入った。
『ファウス様!ミリアで、反乱が起きました!!』
「ミリアでもか……なぜなんだ!?」
《お前の考え方、価値観が認められなかったからだ!》
『『どうすればいいでしょうか?』』
 ファウスは、静かに答えた。
「もう、いい……しばらく、休もうではないか」
『『でも……!』』
「もういい。だから、あきらめて、逃げろ。できる限りの団員を連れてアジトへ来い。
 私は、少し、研究したい事がある」
『何ですか?』
「……ココロ、だ」
「心?」
「ココロだ。私に足りない物、のようだぞ」
 そういって、ファウスは連絡を一方的に切断した。
「フォル……私はいつも裏を読んで戦っていたから、お前のように正々堂々戦えなかった……私が、お前に勝てない所だな……」
 ファウスは独り言を呟いた。
「だがな、フォル……私は、『孤独』の強さを知っているぞ……」

 その後、実は強盗騒ぎはすべて狂言で、死傷者はまったく出ていなかった事が発覚し、ゴッドは何とか無罪として再びアテリア城に戻った。
 早い段階で反乱が起きたこともあり、負傷者は数人、重傷者はゼロという結果に終わった。
 その後、ファウスの姿は天界で見られなくなった。



 第91話 脇役たちの反乱

 天界で波乱が起きていた頃……。
 地上界でも、波乱が起きていた。
「ただいまより、星くんとついてくん 外伝主役決定戦を始めます!」
「司会は、別に主役に興味のないスピラルとアスちゃんでお送りします」
「基本的なルールとして、まず脇役たちには3つのゲームに挑戦してもらいます。
 それぞれに設定されたポイントの合計がもっとも高い人が、星くんとついてくんに挑戦し、勝利した場合20ページ以上というかつてない超大作の主人公になれます」
「ていうか20ページって修学旅行・spring・ファウスの小説3大長編(今名づけた)より短いんじゃ……」
「細かい事を言っている人は即失格ですよ☆」
「では、まず挑戦者の発表です!!」
「挑戦者1!ファミリーリーダーのはず!くりマロン!」
「挑戦者2!主役の話は2回だけ!クリームパン!」
「挑戦者3!キャラの重みはペット以下!コンセンくん!」
「挑戦者4!THE☆薄存在感!謎の声!」
「挑戦者5!出番も印象も子分以下!タイフーくん!」
「以上の5名が出場……」
「待て!今のキャッチコピーはひどすぎるだろ!!」
「はずってなんだ!はずって!」
「ペット以下はないだろ!」
「THEまで付けないでください!」
「……では、第1競技!」
「無視!?無視ですか!?!?」
「赤いひげの冒険アクション大会!」
「それって……」
 まぁ…。
「マ●オ!?マ●オなんですね!?」
「はい。
 ルールは簡単。
 いろんな人の協力を得て超進化した究極ステージを、ヒゲを操作して、クリアしたら50ポイント、中間まで行くと30ポイントです。
 5回まで挑戦できます!」
「よし、いくぞ!」
 こうして、くりマロンから始まった。
 しかし、究極の名は伊達ではなく……。
「ク●ボーが全部ミニク●パになってる!」
「ノ●ノコが巨大化した!」
「土管でかっ!跳べないし!!」
「ファ●アフ●ワーにメラミンが含まれてます!」
「ク●パが鋼のよろいつけてる!」
「キ●ーが分身した!?」
「ゴールの目の前にド●キーいる!そしてタル転がしてる!」
「なんかついてくんがいます!あ!キノコ食べました!」
「星くんもいるし!なんかビーム打ってるし!」
 というわけで……。
 くりマロン30点。
 クリームパン0点。
 コンセンくん0点。
 謎の声30点。
 タイフーくん30点。
「クリア者ゼロですね〜」
「当たり前だ!」
「ていうか、こんなパロディばっかりでいいんでしょうかね?」
「では、第2競技!障害物競走!」
「これは、5人でいっせいにスタートして、障害物を乗り越えて500mを走りきるレースです。
 1位は50ポイント、2位30ポイント、3位10ポイントです。
 ちなみに制限時間30分でゴールできないと失格です!」
「30分!?」
 ま、妥当な数字らしい。
「では……位置について、よーい……スタート♪」
 思わず気の抜けるような合図で、5人は走り出した。
 しかし、第1競技から考えて、普通の障害走なわけがなく……。
「ネットに電流が流れてる!?」
「ハードル高さ8m!?」
 しかも、借り物and人競争が含まれているのだ。
「えーと……」
《キリン》
《i ph●ne(緑で残酷な●使の●ーゼが聞けるもの限定)》
《W●i本体、そしてバランスW●iボード》
《ベリリウム》
《サニー》
「無理だ!キリンは無理だ!!」
「条件が厳しすぎる!」
「W●iとか猫には重すぎます!第一W●i●it持ってないし!!」
「原子だし!地球上では存在できないし!」
「サニーっているのオーストラリアじゃん!」
 そして何とかクリームパンだけが残り1分というところでi ph●ne(緑で残酷な●使の●ーゼが聞けるもの限定)を持ってこれたが……。
「ゴールの目の前にド●キーいる!そしてタル転がしてる!」
 結局……。
「全員0ポイント〜☆」
「当たり前だ!!」

「さて、いよいよ最後の競技ですね〜」
「一応確認しておくと、
 くりマロン30点。
 クリームパン0点。
 コンセンくん0点。
 謎の声30点。
 タイフーくん30点。
 となっています」
「で、最後の競技は、星くんとついてくんクイズ!」
「1問答えるごとに10ポイントで、10問出題されます!制限時間は30秒!」
「逆転のチャンスがありすぎますね」
「では、第1問!」
「絶対答えてやるぜ!」
「小説第46話のタイトルは?」
 ………。
(((((覚えてるわけがねー!!)))))
 まぁ、作者自身も調べないとわかんないんですから、ね。
「……時間切れですね」
「正解は『変わらぬ友情(1)』でした〜☆」
「無理だ!」
 その後も、
「小説44話で星くんがやっていたソフトは?(ハイバーバクダンマン)」
「ゴッドは何代目の神様?(67代目)」
 こんなマイナーな問題が9問続き……。
「最終問題!」
 コンセンくんとクリームパンにチャンスが無い事はスルーしてください。
「あ、これはサービス問題ですね」
「いきます!くりマロンの誕生日は…」
「はい!9月9日」
「不正解!問題は最後まで聞いてください」
「いや、そっから発展する可能性がないだろ!」
「……くりマロンの誕生日は9月9日ですが…」
「「「「ですが!?」」」」
「…くりマロンと同じ誕生日を持つ某名前が日曜なのに水曜発売の雑誌に連載中の、大人気なのにアニメが終わって第二期始まるとか言いながら半年以上放置中の某執事コメディーに登場するキャラクターは?」
「それって…要するにハ●テの●とくですよね…」
「正解は花菱●希でした」
「…絶望的だ…」

 というわけで、結果は言うまでもなく……。
「全員0ポイント〜☆」
「当たり前だ!!!」
「という事は……」
「くりマロン、謎の声、タイフーくんが優勝なので……」
「3人で戦って勝った人が星くんとついてくんに挑めます!」
 結果、くりマロンの勝利。
 星くんとついてくんに3秒で瞬殺。
 結果的に……。
「外伝はなしという事で」
「またね〜☆」
 こうして、脇役の反乱は失敗に終わった。
 ついでに、クリームパンが頑張って借りたi ph●neはド●キーに壊されたので、クリームパンは弁償させられた。



 第92話 アスちゃん誕生日記念 アスちゃんと星くん

「お店が休みなのも久しぶりだな〜♪」
「ま、アスちゃんが研修から帰ってきて、フォーティーワンがリニューアルしてからずっと混んでたもんね」
 アスちゃんは海外への長期研修(第87話参照)で2週間ほどフォーティーワンを休んでいたので、9月後半から11月前半まで、2ヶ月間全く休みを取っていなかったのだ。
 このあたりのアバウトさが個人の店の強みだろう。
「でも、誕生日くらいは空けたいし」
「おれも、たまにはついてくんを放っておきたいし」
 星くんは神様にメールを送って何度も頼み、何とかついてくんを天界に預け、ついでにバイトも入れずにこの日を完全にフリーにしていた。
「でも、何でわざわざ…」
 夢の国(某ネズミ王国)に……。
「えーと…それは…」
 言えない…作者がハ●テの●とく!第16巻を読んで影響を受けたなんて……。
「…まぁ、いろいろと事情があるのよ!事情が!!」

 そもそも何でこんな夢の国に2人きりで来ているかというと……。
「たまには、ついてくんとかくりマロンとか呼ばずに、幼なじみだけで遊ばない?」
「いいけど……いつ?」
「せっかくだから、私の誕生日に☆」
 というわけで、本当は星くんとコンセンくんとアスちゃん、そしてスピラルの4人でディ●ニー●ンドに来る予定だったのだが……。
「あそこはいやだー!」
 コンセンくんの逃亡があったり……。
「フューチア!鳴かないで……うわあっ!」
 スピラルの骨折があったりで……。
「…………」
 2人きりになってしまったのである。
「え…えーと……とりあえず、何かアトラクションに乗りましょうよ!ね!!」
 で、選ばれたのは……。
「なぜに観覧車?」
 当然、気まずさは頂点に達するわけで……。
「「…………」」

 もともとアスちゃんと星くんは、幼稚園から中学校まで11年間ずっと一緒に生活していた。
 中学では一緒に部活でも生徒会でも体育祭でも文化祭でも活躍した2人(第40話〜第41話参照)。
 長い時間を共にすごした2人、当然少なからずお互いに意識している。
 とはいえ、中学卒業後は違う高校に入り、アスちゃんが街に戻ってきてからもアスちゃんはアイス屋で、星くんはついてくんの世話でなかなか自由な時間が作れなかった。
 ここ1年になって、ようやくついてくんは少しずつ成長しているし、フォーティーワンも2号店がかなり順調で、だんだんと経営は軌道に乗り始めていた。
 そして、もしこのマンガ・小説がリアルだったとしたら……。
(おれは開始時点で18歳で、小説内で2回誕生日を迎えた。
 アスちゃんは開始時点で17歳(同い年)だったけど、それは第1話が7月だったからであって、今日で同じ20歳。
 つまり……)
 特殊系も法律は基本人間と同じように適用される。
 2人ともそろそろ結婚とか考えてもいい時期なのだ。
「……ねぇ!」
 さすがに話がないと寂しいので、アスちゃんが話しかけてきた。
「そういえば、サニー、どうしてるかな」
「ああ、そうだな……半年に一回くらい会ってるけどな」
 皆さんが知っている限りサニーの登場はspring編のみだが、第85話からこの話までの1年以上の間に、星くんたちは2回サニーに会っている。
「あ、トリンも」
「思い出したくない!不愉快だ!」
 ……トリンの性格はあまり変わっていないらしい。
 そのとき、急にガコンという大きな音がして、観覧車が揺れ、止まった。
「「あ……」」
 マンガでよくある、「観覧車のちょうどてっぺんで男女2人きりイベント」発生。
「……とりあえず、気長に待つしかないかな」
「そうね」
 そして、話が再開する。
「この2年半で、たくさんの事があったよね」
「ついてくんと会ってから、そんなになるのか」
「とっても早い2年半だったね。現実ですら1周年なのに」
「???」
「あ、気にしないで。でも、楽しい思い出もいろいろ……」
 星くんに忘れられる。
 星くんとついてくんのケンカに巻き込まれる。
「……あったよね?」
「…うん…たぶん……」
 そして、話題はだんだんと過去へと遡っていく。
「中学時代が一番楽しかったよね」
「うん。今も楽しいけど、あの時が一番楽しかった」
「でも……一つだけ心残りがあるな……」
 星くんに……想いを……伝えたかった。
「ん?何?」
 その時、アスちゃんは思った。
 ……もしかしたら、今が……。
「何なの?教えてよ」
 ……ちょうどいいタイミングなのかも……。
「私は………」
 ガタン!
 突然大きな音がして、観覧車が大きく揺れて、動き出した。
「きゃあっ!」
 ま、この話はラブコメではないので。

 気まずさに磨きのかかった状態で、2人の夢の国散策は続いた。
 少しずつ打ち解けてきたため、午後になるとすっかり話に花が咲いた。
「──そしたらジョージはこう言ったのさ☆」
「……それ、どういう状況でならウケるの?」
「──ただの人間には興味ありません──」
「……特殊系でしょ?」
「この命、たとえ失ってもお守りいたします!」
「……魔法使えるの?」
「………あ、そうだ!」
 星くんはついにパロるのを諦めた。
「そろそろパレードが始まるから……」
 そういって、2人はシ●デレラ城でパレードを見ようとした。
 でも、無理だ。
 だって……。
「………」
 ……休日の夢の国の混雑ぶりって、異常だし……。
「じゃ、あえて隙を突いてアトラクションに……」
「そうしよっか」
「あ!ジェットコースターからならパレード一望できるんじゃない?」
 星くんの言葉は名案ぽかったが、実際猛スピードの中パレードが見れるわけもない。
 しかも、2023年に40周年記念で作られた、ランドを一周する世界最長のジェットコースターを選んでしまったから……。
「きゃああああああああ!」
 それから30分くらいレストランで力尽きていたらしい。

 で、いろいろあって日も暮れ……。
「今日は最後までいるでしょ?」
「うん。それに、もうすぐク●スマス・●ァンタ●ーが始まるし……」
 人は相変わらず多かったが、その壮大さに2人とも心を奪われた。
 そして、帰りの電車。
 閉園ぎりぎりより10分くらい前に出たため、リ●ートラ●ンは空いていた。
「今日は楽しかったね」
「うん♪また行きたいね」
「今度は、ついてくんたちも連れて」
 そんなたわいない会話をしながら舞●駅に向かっている2人だったが、アスちゃんの考えている事は……。
(このタイミング…言うべきかな……)
「「あのさ…」」
 ハモる。
「あ、星くんから言って!」
「う…うん……」
 星くんは一息ついて、話し出す。
 ※元ネタを知っている人なら読める展開です。
「ずっとアスちゃんに言わなきゃと思っていた事があるんだけど…」
「へっ!?ま…!!待って星くん!!まだ私…心の準備が!!」
「帰りの電車賃…貸してくれない?」
「………」
 殴れ!小気味いい効果音で今すぐ殴れ!!
(何この声……でも、いっか)
 ポカポカポカ。ペクッ。

 そして帰りの●葉線の車内。
「オチまでパクって良かったのかな?」
「ま、いいんじゃん?」
 そのとき、アスちゃんは思った。
 ……でも……。
「あ、そういえばアスちゃん何か言いたい事あったんじゃないの?」
「へっ!?」
 ……もう少し……。
「な、なんでもないわよ!!」
「そう?」
 ……この日常を楽しむのも、いいかも……。



 第93話 星くんの突っ込んではいけない一日

 ある日、星くんは気が向いたので山へクエストに出かけた。
 そこでグラ○モスに遭遇した。
 星くんは持ち歩いていた双剣を取り出して構えた。
 簡単にグ○ビームをかわした星くんは、反撃を始めた。
 星くんはまるでガン○ールヴのごとく剣を操って斬りかかった。
 グラビ○スは一撃で倒れた。
 と思ったら実はバ○ルモスだった。
 星くんが剥ぎ取りのモーションを行うと、贄殿遮那が取れた。
 ほしくんは にえとののしゃなを てにいれた!
 星くんは贄殿遮那をニコニコベーカリーに売った。
 スピラルはお返しにスターロッドを星くんにあげた。
 星くんはスターロッドをポチにあげた。
 ポチはスターロッドをコピーしてスターロッドの能力を手に入れた。
 星くんはそれを見て満足した。
 満足した星くんは何となく踊りたくなった。
 星くんは踊るためにポンポンを買いに行く事にした。
 ポンポンを購入した星くんは早速ミニスカートに着替えた。
 星くんは自室に閉じこもってチアダンスを始めた。
 曲は『禁じられた遊び』である。
 その様子を見つけたついてくんは一緒に参加した。
 すっかりハマったついてくんを見捨てて星くんは部屋を出た。
 着替えて外に出た星くんにくりマロンが体当たりを食らわせた。
 ぶつかった星くんは光の速さで吹き飛ばされた。
 光になった星くんは地球を一周して反対側からくりマロンに体当たりした。
 くりマロンがお星様になったのを見届けた星くんはついでに近くにいたクリームパンをミクルビームで焼き尽くした。
 アイスやさんの アスちゃんが しょうぶを しかけてきた!
 アスちゃんの かえんほうしゃ!!
 ほしくんは たおれた!!
 星くんは生き返った。
 星くんはマグネットパワーでアスちゃんを返り討ちにしてまた散歩を始めた。
 そこにコンセンくんがいたが、星くんは目もくれずにスルーした。
 コンセンくんは泣き出したが、星くんはスルーした。
 坂に差し掛かると、上の方からたまじいがゴロゴロと転がり落ちてきた。
 星くんはたまじいをレビテーションで浮かせてその下をくぐった。
 くぐり終わった星くんはたまじいを地面に叩きつけた。
 星くんはそれから58時間後に家に戻った。
 ついてくんはまだチアダンスをしていた。
 曲は『アンインストール』になっていた。
 星くんは再び着替え、ダンスに加わった。
 めでたしめでたし☆



 第94話 星くんをだませ!

「……おっほん!
 今からS○S団主催のドキドキ☆星くん禁制のエイプリルフール作戦会議をはじめたいと思います」
「わ〜(パチパチ)」
「……いや、その団関係ないだろ」
 ……という唐突なノリで始まった会議。
 メンバーはついてくん、くりマロン、クリームパン、コンセンくん、アスちゃんの5人である。
「明日はエイプリルフールという事で、いつも冷静な星くんをあわてさせてみよう!! と思うのですが、何か意見はありますか!?」
 ついてくんがハイテンションに仕切った。
「要するに嘘をつくのよね?」
「そういうことだけど……」
 ついてくんのテンションが突然落ちた。
 ただの気まぐれである。
「ここは古典的に誰かが重病とかは?」
「いいかもね」
「漫画のを真似てみれば?」
「それもありかな」
「やっぱ最後は盛大に……」
 意見は順調にまとまりつつあった。

 そして、エイプリルフール当日。
「おはよ、ついてく「成仏しようと思うんだ」
「………」
 えーと……あ、どうも星くんです。いきなり重くてすいません。みなさますっかりお忘れかと思いますが……
「ってなるかー!!」
「ノリがいいね」
「……どうせエイプリルフールだろ? あまりに単純すぎて可哀想だったからノッてあげたんだよ」
「ねーねー星くん、散歩行こー」
 聞いていなかった。
「……とかいってどうせくりマロンたちと協力しておれを騙す作戦なんだろ?」
「ぎくっ!」
「自爆早っ!」
「そ、そそそんなこここことはななななないよ?」
「そしてわかりやすっ!!」
「とにかく行こーよー」
「断る」
 ついてくんはしばらくゴネていたが、不意に立ち上がると、ポケット(あるの?)から携帯電話(押せるの?)を取り出した。
「……もしもし、こちらついてくん。星くんの外への連れ出しに失敗しました」
「露骨にも程があるわー!!!」
 報告するついてくんに星くんが強烈な蹴り(命名・星くんキック)を食らわせた。
「ついてくん!! 応答しろ、ついてくん!
 ついてくーん!!」
 くりマロンが某蛇風に叫んでいるのが聞こえたが、星くんは無視した。
 こうして、ついてくんたちの計画は失敗に終わった……。

 ……と、これで本当に終わってはS○S団の威信にかかわる。
 S○S団全く関わってないけど。
 少しでもたくさん嘘をつけば1個くらい引っかかってくれるだろうと思ったついてくんは……。
「あ、星くん! あんなところにUFOが!!」
「うそだろ」
「星くん! あそこにサニーがいるよ!!」
「うそだろ」
「あんなところに空飛ぶ肉まんが!!」
「うそだろ」
「ファウスが踊ってる!!」
「うそだろ」
「そういえば今日アスちゃんの誕生日だった!!!」
「うそだろ」
「あそこでくりマロンが歌ってる!!」
「興味ねーよ」
「じゃあクリームパンが!!」
「……そういえば昨日買ってきたタコヤキが」
「どこ!?」
「嘘だよ」
「ひどーい」
「でもテリヤキバーガーは」
「どこどこ!?!?」
「あると思うか?」
「ひどい!
 星くんの嘘つき!!」
「お前が言うな!!
 今日1日で7回も嘘ついただろ!!」
「8回だよ」
「数えるな!!」
 星くんは叫び疲れた。
「……もう疲れたから、アイスでも食べに行こう」
「やったああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
「いや、リアクション大きすぎ」

「いらっしゃいませ〜♪ あ、星くんと……どちら様ですか?」
「忘れたの!?」
「嘘に決まってるでしょ。
 で、ご注文は?」
「照り焼きチキンを10個!!」
「俺はトマトとレタス」
 パンがあればテリヤキバーガーが作れるメニューを選択した2人は、店内に置いてある椅子に腰掛けた。
「はい、ついてくん。照り焼きチキン10個」
「これ9個しかないよ」
「そんな嘘にはだまされないわよ。
 はい星くん、先にトマトアイス」
 アスちゃんが真っ赤なアイスを星くんに手渡した。
「ありがと。
 じゃ、いただきまーす」
 星くんはその真紅のアイスを口に入れた。そして……。
「辛ーっ!!
 アスちゃん、これ唐辛子アイスじゃないの!?」
「そうよ」
「何でこんな事を!?」
「エイプリルフールだから」
「騙されたー!!!」
 星くんがあまりの辛さに悶えていると、突然ついてくんが大声を上げた。
「星くんが騙されたぞー!!
 よっしゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「お前は何もしてねーよ!!」

 そして、その夜。
 ぐっすり眠っていた星くんは、真夜中に突然鳴り響いた携帯の着信で起こされた。
「……もしもし〜?」
『あ、星くん?俺だよ、オレオレ。
 さっき事故起こしちゃってさ〜、5億円くんない?』
 星くんはその声質から、相手がくりマロンであると判断した。
「……おいクソ栗」
『誰がクソ栗だ!!』
「これ、エイプリルフールの冗談のつもりか」
『当たり前だ!!
 せっかくの記念なんだ、前回2回しか出られなかった分ちゃんと出演してやるぜ!!』
「……おいクリームパン」
『あんなクリームパンと一緒にするな!』
「アンパンだよ」
『どっちでもいい!』
「……今の時刻を見ろ」
『はぁ? ……うぐばあっ!?」
 現在時刻……1時25分。
「……今は4月2日だ」
『4月1日の25時25分だぜ』
「黙れくりメロン」
『果物を変えるな』
「24時間プラスできるのはハヤテのごとく!! の放送時間だけだ」
『いや、あとぴったり2日なんだし、ここはくぎみーにでも免じて……』
「ハヤテのごとく!! はテレビ東京系で4月3日の25時23分からだ。2分オーバーだぞ」
『そのくらい許してくれても……』
「いいわけないだろ。
 今から疾風の如くお前を木っ端微塵にしてやるから覚悟しとけ」
 星くんは電話を切ると、ついてくんを起こした。
「なに〜? 星くん」
「今からくりマロンをフルボッコにしに行くけど、一緒に行く?」
「いいともー!!」
 ……安らかに眠れ、くりマロン。



 第95話 The Party of The Star Festival

 7月7日。
 言わずと知れた、ついてくんの誕生日である。
 ……しかし現在は7月8日、その翌日だった。
 なぜかというと、その前日に星くんとついてくんがケンカをし、気がつくと日を跨いでいたからだ(第86話参照)。
「ふぃ〜。
 やっと家に着いたし、パーティーしようよ! 1日遅れだけど」
「ふざけんなバーカ。お前のせいでお金もなくなったし疲れたし、お前の誕生日パーティーなんて絶対やってやんねーよ」
 星くんは意外と根に持っていた。
「……でも、さっきみんなにメールしちゃったよ?」
「は?」
「ほら」
 星くんがついてくんから渡された携帯の画面には、『今日朝9時からパーティーやります。
 来なかった者は死刑だから!』
 という送信済メールが表示されていた。
 死刑て。
 ……というツッコミは心の中だけにとどめておく星くんである。なぜかというと、もっと言わなければならないことがあったから。
「ふざけんな!」
「うるせー!!」
「ぐはぁっ!」
 キレた星くんはついてくんに怒鳴りつけたが、逆ギレしたついてくんにドロップキックを食らった。
「何しやがる!」
「気がついた!」
「パロじゃないから乗るな」
「うるせー!!」
「ぐはぁっ!」
 星くんはついてくんに普通にツッコんだが、逆ギレしたついてくんにドロップキックを食らった。
「何しやがる!」
「気がついた!」
「パロじゃないから乗るな」
「うるせー!!」
「げふぅっ!」
 星くんはついてくんに普通にツッコんだが、逆ギレしたついてくんに腹を殴られた。
「何しやがる!」
「気がついた!」
「パロじゃないから乗るな!!」
「うるせー!!」
「ほがぁっ!?」
 星くんはついてくんに怒ってツッコんだが、逆ギレしたついてくんに地面に叩きつけられた。
「何しやがる!」
「気がついた!」
「パロじゃないから乗っちゃダメだろ」
「うるせー!!」
「うががががっ!」
 星くんはついてくんに冷静にツッコんだが、逆ギレしたついてくんにボコられた。
「何しやがる!」
「気がついた!」
「パロじゃねーよ!」
「うるせー!!」
「くぎゅぅぅぅぅう!」
 星くんはついてくんに普通にキレたが、逆ギレしたついてくんに虚無の魔法で吹っ飛ばされた。
 ……と、そんなことを繰り返すこと15498回。
「パロじゃねーよ!」
「うるせー!!」
「いい加減にしろー!!」
「はうっ!」
 いつの間にか時刻は9時半。
 待ちくたびれたくりマロンのくりマロクラッシュ(要するにただの体当たり)を食らった星くんは吹っ飛んだ。
「そんな萌えるリアクションしても許さねーよ!!」
「お前萌えたの?」
「まさかのホモ+ショタコンという最悪属性のかけ持ち?」
「うわー、ちょっとひくわねー」
「萌えてないからそのちょっと哀れみのこもった軽蔑の目をやめい! あとアスちゃんも乗るな!!」
「……で、何の用?」
「お前が呼んだんだろ!!」
 ツッコまれたのはついてくんだが、なぜかくりマロンに殴られたのは星くんだった。
「……不幸だー」
 星くんが呟いたが他の人は見向きもしない。つくづく不幸な星くんであった。
「で、パーティーすんだろ? ケーキは?」
 コンセンくんがわくわくを隠さずに聞いた。
「現金すぎるわ!!」
 すぐに立ち直った星くん。タフだ。
「うるせー!!」
 電撃をまとったコンセンくんに体当たられた。不幸だ。
「いてて……。
 ……つーか、パーティーなんかやらねーぞ? このおばけが勝手に言っただけで」
「ふざけんな!!」
「今さらそんなこと認められるか!!」
「ワンワンワワン!!」
 怒ったくりマロンとクリームパンとポチのトライアタックをまともに食らったが、星くんは持ちこたえた。すげー。
「……くそっ、仕方ねーなぁ……。
 その代わり! ついてくんの誕生日パーティーだけはやらねー!!
 なぜなら俺のプライドが許さないから!!」
 エッヘンとばかりに胸を張る星くんだったが、日和った感満載なので周りの視線は絶対零度である。
「つーわけで、ただいまより七夕パーティーを開催します!!」
「わーわー」
「ぱちぱちー」
「ひゅーひゅー」
 ちなみにひゅーひゅーもぱちぱちーも口で言っている。
 やる気のないメンバーである。
「というわけで今すぐ短冊に願いを書け!
 制限時間は3分!!」

 ************************

 その後、笹に願いを吊るしたりご馳走を作ったりということがあったらしいが省略する。
「じゃ、これからパーティーをはじmぐぎゃごばぁあっ!?」
 開会を宣言しようとした星くんだったが、その場所が不運にも食べ物にありつこうとする人々の群れの進路だったため、後ろから突進を受けてフルに踏みつけられた。
「よっしゃあぁぁぁぁあ!!」
「食うぞぉおおおおお!!」
「しゃーぶーしゃーぶー(×6)」
「肉は俺のもんだにゃー!!」
 テンションの上がり方が段違いである。食欲は偉大ですね。
 ちなみにお寿司パーティーだったりする。

「ふう……なんか疲れた……。
 というか昨日から今日にかけての俺、不幸すぎやしませんこと?」
 独り言も虚しくなってきた星くんだったが、ここでサンドイッチを求める群衆に混じるとフルボッコにされるのは目に見えていたので、みんなの短冊でも見てくることにした。
 ちなみにあの後の準備段階でついてくんが片っ端からメールを送ったため(しかも不幸の手紙になっていたため次々と広がっていった)、結果的に星ついのキャラクターが勢揃いしていた。
「どれどれ……」
『タコヤキをたくさん食べられますように ついてくん』
「ついてくん……やっぱりそうか…………ん?」
 裏にも何か書いてあるらしかった。黒いインクが裏写りしている。
 星くんが紙を裏返すと、そこには取消線を引かれたこんな文章があった。
『タコヤキをタコさん食べられますように(笑)』
「…………」
 あとでぶん殴ってやろうと思いながら星くんは次の短冊を見た。
『金くれ くりマロン』
『地球の自転を逆回転にして欲しい コンセンくん』
『変革 フューチア』
「……うん、これが来るのはわかってたよ。七夕だしね。
 でもフューチアカッコよすぎだろ!!」
『僕を主人公にした映画がアカデミー賞を取れますように クリームパン』
「こいつ……まだ諦めてなかったのか……。
 つーか映画ができる前提!? 夢見すぎだろ!!」
『ワンワンワワワンワンワワン ポチ』
『ニャーーーーーーー(゜∀゜) キューティア』
「……スルーしよう」
 内心キューティアの鳴き声がニャーだったことが一番の驚きだった星くんである。
『出番が欲しい ニード&ドーニ&タイフーくん』
「……切実だなぁ……。というか連名なのがさらに悲愴だな」
『PREES MAIN DE☆BAN タコ』
「……プリーズマイでばん?
 欲しがるなよ……。出られたことだけでも奇跡だぞ」
 ちなみにスペリングミスが多いため、直訳すると「試み主なDE☆BAN」という意味不明なものになっている。
『とうま、私はでばんがほしいんだよ!! フェニス』
「マイナーすぎるわ! そして誰に向かって言ってんだよ!!」
(※注:フェニスはファウスの子分の1人です。覚えてますか?)
『出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい 謎の声
「怖い怖い怖い!! しかも名前ちっちゃ!!
 執着しすぎだ謎の声!!」
『出番がありすぎていらない アスちゃん』
「……いつか殺されるぞ」
『世界征服 ファウス』
「お、まともなのが来たな」
『↑の阻止 ゴッド』
『↑の邪魔をする バジル』
『↑を止める アテンド』
「張り合いすぎだ!!」
『出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい 謎の声
「願いは1人1個まで!! どんだけ欲しいんだよ!!」
『また出たい…… あんこコウ』
「…………」
『出たい…… ゴースト』
「…………」
出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい 謎の声
「上の2つを見て自重しろ謎の声!!
 つーか詰めるな!! 名前もう見えねーじゃん!!」
 そうこうしているうちに終わりが近づいていた。
「後は俺の短冊だけか……ん?」
 星くんの短冊の隣にもう1枚かかっている。
『星くんの願いなんか叶うわけねーよ。ぷぷー ついてくん』
「…………、殺そう」
 決意を新たにした星くんだったが、自分の短冊の裏に何か書いてあることに気づいた。
『出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい出番が欲しい 謎の声
「他人の短冊を使うな!!」



 第96話 The Party of The Birthday

 7月7日。
 言わずと知れた、ついてくんの誕生日である。
 ……しかし現在は7月8日、その翌日だった。
 なぜかというと、その前日に星くんとついてくんがケンカをし、気がつくと日を跨いでいたからだ(第86話参照)。
「ふぃ〜。
 やっと家に着いたし、パーティーしようよ! 1日遅れだけど」
 ついてくんがいきなり言った。
「ふざけんなバーカ。お前のせいでお金もなくなったし疲れたし、お前の誕生日パーティーなんて絶対やってやんねーよ」
 いきなり否定された。
「……でも、さっきみんなにメールしちゃったよ?」
「は?」
「ほら」
 ついてくんが星くんに渡した携帯の画面には、『今日朝9時からパーティーやります。
 来なかった者は死刑だから!』
 という送信済メールが表示されていた。
 ついてくんはどう? ボクよくやったよね? 的な顔で星くんを見た。
 が、
「ふざけんな!」
「うるせー!!」
「ぐはぁっ!」
 ついてくんはキレた星くんに怒鳴りつけられたが、逆ギレしたついてくんはドロップキックを食らわせた。
「何しやがる!」
「気がついた!」
「パロじゃないから乗るな」
「うるせー!!」
「ぐはぁっ!」
 ついてくんは星くんに普通にツッコまれたが、逆ギレしたついてくんはドロップキックを食らわせた。
「何しやがる!」
「気がついた!」
「パロじゃないから乗るな」
「うるせー!!」
「げふぅっ!」
 ついてくんは星くんに普通にツッコまれたが、逆ギレしたついてくんは腹を殴った。
「何しやがる!」
「気がついた!」
「パロじゃないから乗るな!!」
「うるせー!!」
「ほがぁっ!?」
 ついてくんは怒った星くんにツッコまれたが、逆ギレしたついてくんは星くんを地面に叩きつけた。
「何しやがる!」
「気がついた!」
「パロじゃないから乗っちゃダメだろ」
「うるせー!!」
「うががががっ!」
 ついてくんは星くんに冷静にツッコまれたが、逆ギレしたついてくんがボコった。
「何しやがる!」
「気がついた!」
「パロじゃねーよ!」
「うるせー!!」
「くぎゅぅぅぅぅう!」
 ついてくんは星くんに普通にキレられたが、逆ギレしたついてくんは贄殿遮那で星くんを吹っ飛ばした。
 ……と、そんなことを繰り返すこと15498回。
「パロじゃねーよ!」
「うるせー!!」
「いい加減にしろー!!」
「はうっ!」
 いつの間にか時刻は9時半。
 待ちくたびれたくりマロンのくりマロクラッシュ(要するにただの体当たり)を食らった星くんは吹っ飛んだ。
 ちなみについてくんは見ていただけである。
「そんな萌えるリアクションしても許さねーよ!!」
「お前萌えたの?」
「まさかのホモ+ショタコンという最悪属性のかけ持ち?」
「うわー、ちょっとひくわねー」
「萌えてないからそのちょっと哀れみのこもった軽蔑の目をやめい! あとアスちゃんも乗るな!!」
「……で、何の用?」
 ついてくんが聞いた。
「お前が呼んだんだろ!!」
 ツッコまれたのはついてくんだが、なぜかくりマロンに殴られたのは星くんだった。
「……不幸だー」
 星くんが呟いたが他の人は見向きもしない。つくづく不幸な星くんであった。
「で、パーティーすんだろ? ケーキは?」
 コンセンくんがわくわくを隠さずに聞いた。
「現金すぎるわ!!」
 すぐに立ち直った星くん。タフだ。
「うるせー!!」
 電撃をまとったコンセンくんに体当たられていた。本当に不幸である。
「いてて……。
 ……つーか、パーティーなんかやらねーぞ? このおばけが勝手に言っただけで」
「ふざけんな!!」
「今さらそんなこと認められるか!!」
「ワンワンワワン!!」
 怒ったくりマロンとクリームパンとポチが星くんにトライアタックをまともに食らわせたが、星くんは持ちこたえていた。さすがだ。
「……くそっ、仕方ねーなぁ……。
 その代わり! ついてくんの誕生日パーティーだけはやらねー!!
 なぜなら俺のプライドが許さないから!!」
 エッヘンとばかりに胸を張られたが、日和った感が満載なのでついてくんを含む周りの視線は絶対零度である。
「つーわけで、ただいまより七夕パーティーを開催します!!」
「わーわー」
「ぱちぱちー」
「ひゅーひゅー」
 ちなみにひゅーひゅーもぱちぱちーも口で言っている。
 やる気のないメンバーである。
「というわけで今すぐ短冊に願いを書け!
 制限時間は3分!!」

 ************************

 その後、笹に願いを吊るされたりご馳走を作られたりということがあったらしいが省略する。
「じゃ、これからパーティーをはじmぐぎゃごばぁあっ!?」
 その場所が不運にも食べ物にありつこうとする人々の群れの進路だったため、ついてくんを含む人々の群れは開会を宣言しようとしていた星くんを後ろから突進を食らわせてフルに踏みつけた。
「よっしゃあぁぁぁぁあ!!」
「食うぞぉおおおおお!!」
「しゃーぶーしゃーぶー(×6)」
「肉は俺のもんだにゃー!!」
 テンションの上がり方が段違いである。食欲は偉大ですね。
 ちなみにお寿司パーティーだったりする。

「もぐもぐ……あ、ついてくんたんじょーびおめでとー」
「むしゃむしゃ……ぉ、ありがとー」
「ぱくぱく……あぁ、そういえば誕生日だったっけ」
「ニャーーーーーーー(゜∀゜)」
「ごがががががが……忘れてたの? もともとそういう目的だったじゃ……うぐっ!?」
 ちなみに上のニャーー(以下略)は不幸を呼ぶ猫ことフューチアのセリフである。つまりそういう事。
「だ、大丈夫ついてくん!?」
「うん……だいじょうぶかも……」
 なんだか口調がどっかのシスターみたいになっている。
 そういえば白いところも大食いなところも空から降ってきたところも一緒だ。
「はいこれプレゼント」
「わーい!!」
 皆からのプレゼントの山を見て大喜びなついてくんである。
「くりマロンからは……」
 ワイヤレスアダプタ。
「うっわ、微妙……てかいらねー……」
 知らない人はググってね☆
「クリームパンは……何これ?」
 クリームパン主演の映画の予告編DVD(手作り)。しかもご丁寧にBlu-rayバージョンもついている。
「……あとで捨てよ……。
 あ、アスちゃんからだ!
 アイス割引券。
「スピラルさんは飼い猫(&タコ)と連名で……」
 パンの割引券。
「……販促かよ。
 ……で、コンセンくんは……」
 腕時計。
「あ、ポチからも来てる!」
 懐中時計。
「神様から!?」
 目覚まし時計。
「アテンドとホリアとサクシアまで!?」
 ストップウォッチ。
「……謎の声?」
 よくわかんないけど時計。
「…………、時計好きすぎだろー!!!!」
 渾身のツッコミであった。
「ニード&ドーニくんは3色ボールペンか。
 あ、タイフーくんから……6色ボールペン!!
 マヨネーくんは……8色ボールペン!?」
 なんだか悪役としての格の違いを見せ付けられているようで悲しくなるついてくん。
 が、上には上がいた。
「ファウスからプレゼント!?
 えっと……って、これシャーボじゃん!
 しかもボールペンのインクの付け替えができて、12色の中から好きな色のインクを付けられるとかいう例のあれ!」
 たぶんデパートとかに時々置いてあります。
「…………、あとは星くんだけか」
 星くんのプレゼントの箱はめちゃくちゃ大きかった。
 地球儀でも入っているのだろうか。
「楽しみだな〜♪」
 ……からっぽ。
 箱の底に大きく墨で「ばか」と描かれている。
 メモ用紙すらあげたくないらしかった。
「…………、殺そう」

「星くーん!」
「つーいてくーん!!」
「「死ねー!!!!!」」
 結局、昨日に引き続いてバトルエンドを迎えた2人であった。

 ……ちなみに……。
「で、謎の声のプレゼントは何だったんだ?」
「んー? えっとねー……」
 カチ、カチ、カチ、カチ。
「……時限爆弾……」
「…………………………、81話前のオチ!?」
 そして、爆発。

 ……ちなみに……。(その2)
「ねーねー、星くんの願いごとって何だったの?」
「……え?」
 星くんが冷や汗をかいたがついてくんはお構いなしである。
「どれどれ〜?」
『みんなが健康で楽しく1年過ごせますように 星くん』
「…………」
 プチッ、という音が聞こえた気がする。
「ふーざーけーんーなーーーーー!!!!!
 何、自分だけカッコいい願いにしてんだよ!!!!!!!」
 戦いの第3ラウンド、幕開けである。

 ……ちなみに……。(その3)
「そういえば、この日で2話も使ってよかったの?」
「いや、よくはないんだけど、95話が俺の話になっちゃってあまりについてくんがかわいそうだったから……」
「……ってことは、計算がおかしくならない?
 100話がアスちゃんの誕生日になっちゃうよ?」
「あ、それは大丈夫だ」
「何で?」
「……コンセンくんとくりマロンの誕生日をまとめるから」
「…………」
 遠い目をする2人であった。




 第97話 くりマロンvsコンセンくん

 今日は9月の、6日。
「くりマロンとコンセンくん、お誕生日おめでと〜!」
「「…………」」
 いつもどおり、星くんの家でパーティーをしていた。
「あれ? 何でそんな不機嫌な顔なの?
 ほらほら、プラグ型のモンブランとか栗型のランプとか遺伝子組み換えによって作られた光る栗とか用意してあるよ?」
「うるせー!」
「げふぅ!」
 いつもどおり、星くんが殴られた。
「何で俺たちの誕生日が一緒にされてるんだよ!!」
「それは96話の最後に書いた」
「しかも9月6日って!!
 どっちの誕生日ですらないじゃん!!」
「だってどっちかの誕生日にしたらまた文句たらたらっしょ?」
「当たり前だー!!
 これが文句言わずにいられるかってんだよー!!」
「そうだそうだ!
 第一理由だって『星くんの話が長引いた』ってだけじゃねーか!」
「いくら毒舌キャラが使いやすいからって、主役だろ!?
 エイプリルフールとかで散々目立ってたじゃん!」
「でも、せっかく書いた話を没にしたくないって、作者が」
「だったらせめてRadi'ASに呼んでくれよ!!
 これはヒドイだろ!!」
「だって作者が夏休みの課題に追われてそよ☆らじ!!で手一杯だったし」
「なんでそっち優先なんだよ!」
「しかもさっきから地の文が『いつもどおり』ばっかりだし!
 そんなに定番ネタしかやってくれないのか俺たちの誕生日は!」
 いつもどおり、次々と文句を言うザコキャラども。
 見事な連携プレーだ。
「……気が済んだ?
 じゃあ改めて、誕生日おめでと……」
「うぉい! 当然のように流すなハゲ!」
 ちなみにハゲに反論できるキャラなんてタワシフラワーくらいしかいなかったりする。
「もー、わかったわかった。
 じゃ、くりマロンとコンセンくんが戦って、勝った方がこの話の主役って事でいい?」
「よぉし、望むところだ!」
「瞬殺してやるぜ!!」
 一瞬にして連携は崩れた。
「うおぉおおおおおおお!!」
 コンセンくんの周りにオーラ、つまり「気」が現れた。
「すごい、すごいよキ○ン!」
「キ○ン言うな」
「コンセンくんのバックに孤高のエ○キブルが見えるよ!!」
「せめてエ○キッドにしてやろうな。旬だし」
 HGSS今秋発売。
 ちなみにエ○キッドは正直、弱いです。
「負けるかぁああああああ!!」
 くりマロンも負けじと全身からオーラを発する。
「す、すげー……すげーよキョソ……」
「キョソって何だよ」
「くりマロンのバックに創○学会が見えるよ!!」
「それはさすがにやめようね。
 いくらなんでもそのネタはダメだろ、旬とか関係なしに。
 公○党はそれをバックにつけて全滅したんだから傷口に塩を塗りたくるようなマネはやめとけ」
「星くんの方がさらりと危ない事言ってるよ……。
 では! お互いの力がハッキリしたところで!」
「してないよ」
「れ、れでぃー……ふぁ、ふぁ、ふぁいと!」
「なんで突然ぎこちないんだよ!
 普通にエ○キブルとか言えてただろーが!」
「食らえー!
 エ○キブー○ター!!」
「それ、ただの道具名だろ」
 コンセンくんはエ○キブー○ターを投げつけた!
「何をー!!
 食らえ! 組織票!!」
 くりマロンは愛すべき信者の皆さんを盾にして攻撃を防いだ!
「ストーップ!!」
 星くんが3回笛を吹いた。
「ん?」
「お前ら、いい加減にしとけ!
 主にくりマロン! 不謹慎にも程があるぞドアホが!」
「れで、ぃー、ふ、ぁいとー!!」
 ついてくんが勝手に笛を吹いた。
「勝手に始めるなー!
 あとさっきのセリフどうやって発音するんだよ!!」
「食らえ、億千万ボルト!」
 くりマロンは銀のスプーンを目に当て紅白帽を頭に被った某世界記録保持者を召喚した!
「ダメだこいつ、何が元ネタかすら把握してねぇ!」
(元ネタがわからない人はYouTubeで「ニコニコ 組曲」と検索をかけてみよう♪)
 ウ○トラマンセ○ン風ボルトがくりマロンに体当たりした!
「ぐぎゃぐばぁっ!
 ……まったく…たいした奴だ。
 だがこれは避けられまい!
 必殺! 今そこにある漫画・アニメ禁止法案!」
 くりマロンはア○ネス・チ○ンを呼び出した。
(元ネタがわからない人はGoogleで「児童ポルノ アニメ」と検索をかけてみよう♪)
「うわあぁああああっ!!
 長門が、俺の嫁がぁあああ!!」
 コンセンくんは死亡寸前だ!
「いつからコンセンくんってオタクになったの?」
「さぁ?」
 ふらふらになりながらも、コンセンくんは何とか立ち上がった。
「ならばこれでどうだ!
 超機動少女カナミン召喚!」
 コンセンくんはヒューズ・カザキリを発動した!
「くっ幻術か……。
 ならばこちらは奥義、小選挙区の恨み!」
 くりマロンは真面目な小学生のおおた君を呼び出した!
(元ネタがわからない人はYouTubeで「公明党ウェブムービー」と検索をかけてみよう♪)
「お前、ガラス割っただろ」
「わ、割ってないよー!!」
「じゃあ、誰が割ったんだよ」
「ひ…秘書だよ! 秘書がやったんだよぉ!」
『よい子のみんな、正直に生きよう☆』
「だが断る!」
 コンセンくんはおおた君の呪いを跳ね除ける事に成功した!
「うそ…だろ…?」
 呆然とするくりマロン。
「とどめだー!
 奥義、スク○ルデイズ!」
「なん…だと…」
 くりマロンの頭上から突然ボートと城が降ってきて、くりマロンの姿が見えなくなった。
 そして現れる、テロップ。
「Nice Boat.」
「コンセンくんの勝ちー!」
「……コンセンくんは勝ったが、作者は様々なものを敵に回した気がするぞ」
 こうして、コンセンくんは見事勝利した。
「……では、残った1ページ(A4用紙の半分)はコンセンくんのものです!」
「……は?」
「では、どうぞ!」

「コンセンくん、誕生日おめでとう!」
「おめでとー」
「よかったな、コンセンくん」
「おめでと、コンセンくん☆」
「ワンワン!」
「ニャア!」
「誕生日おめでとう!」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「…………!」
「…………!」
「…………」

「はい、1ページ終了!」
「嘘だろ!?
 てか中身なさすぎだろ!!」
「知らね」
「おい、ちょっ、嘘だろ、待てよ、待ってくれよー!
 なんだかんだ言いつつはいはいわかりましたよ〜で続き書いてくれたりしないの!? 第18話みたいに!」
 本当に書きません。



 第98話 クリームパンの夢の続きのそのまた続き

 ここは星くんの家。
『クリームパンの超絶空気化を防ぐ会』という垂れ幕が壁に掲げられている。
「突然ですが……」
 ついてくんが重くもない口を開いた。
 ちなみに現在ここにいるのはついてくんとクリームパンである。
 星くんはついてくん物理的に沈黙を強いられました。
「作者がネタに詰まりました!」
「はぁっ!?」
 クリームパンが叫ぶ。
「むー、むぐー!」
 星くんがじたばたするのでついてくんは適当に鉄球をクリティカルヒットさせて黙らせた。
91話あたりからパロディしかやってなかった事に愕然とした作者が何とか違う方向性を模索したのですが……」
「ですが……」
「ダメでした!!」
「えぇっ!?」
 クリームパンがまた叫ぶ。
「そこで去年の誕生日からネタをもらってやろうとしたら……」
「したら?」
「史上最短な上にオチが『次回へ続く!』という最悪なものでした!」
「…………」
 クリームパンがついに黙る。
「ちなみに、序章で詰まった『第98話・没案』を一応見てみましょう!」

 第98話 クリームパンの旅 - Hunter of crumbs -

 This world is overflowing with occurrence like crumbs.

Vol.0 [Why of that]
「旅に出るの?」
 まるでクォーターパウンダーのようにずかずかと聞いてきたのは、もみの木に問いかけるアルプスの少女が隠し持っていた白パンの色をしたおばけだった。
「うん」
 折れたチュロスよりも短く、簡潔に答えた。
「何で?」
 彼は真夏の車内に何時間も放置されて干からびたメロンパンくらいしつこかった。
「ボクはね」
 そこで、すっぱりと言葉を切った。コンビニで売られている食パンみたいだ。
「探してるんだよ。何かを」
 適当だった。
 サンデーでかつてアニメ化されたパン漫画の「ごパン」くらい適当だった。
 だが、その本質を掴むために旅をしているのだ、ボクは。
 きっと。


「……………………。
 ナニコレ!?」
「だから第89話の没案。
 正式に決まらなくてよかったでしょ?」
「これもパロディやん!
 しかも何だよ、『真夏の車内に何時間も放置されて干からびたメロンパン』って! 意味不明だよ!」
「知るか」
「『ずかずか』のたとえクォーターパウンダーでいいの!?」
「興味ねーよ」
「でも……」
「うっせーよパンクズ!」
「ええっ!?」
「没案紹介したらぐだぐだと文句垂れやがって!
 そんなに言うんだったらお前が書けよ、ワラジムシのもげた足のくせして!」
「なぜに逆ギレ!?」
「てかお前、確か自分を主人公にしたアニメを公開してたろ!
(というエピソードが84話の後に書かれる予定だったエピローグにありましたが、その後も普通に続いたのでエピローグごと削除されました☆)
 その才能をここで遺憾なく発揮しろよ!」
 という訳で、クリームパン作の小説です。

 飼い犬のティガーと散歩に僕が出かけました。ある晴れた日の事です。
 すると、その目の前に眩い光を放ちながらきらきらと光り輝く銀色の勾玉だった。いや、ごめんウソ。
 本当は100円玉でした。
 遠くから見ても100円玉で、離れて見るとなおさら100円玉に他ならない。
 よく見ると1円玉でした。
 僕がリードをつかむ時間も惜しく、犬を抱えるとリードを引っつかんで100円玉へ走った。
 ダッシュして足を止めて拾うと、それはドーナツの穴を見つけた。
 これが……50円玉だ!


「ストーーーーーップ!!」
「何!?」
「お前3歳児か!
 リア鬼でももうちょっとマシな文書くわ!」
「どこが?」
「見間違いが多すぎるとかリードつかんでんじゃんとかいう以前の問題だよこれは!
 まず『いや、ごめんウソ』に壮絶な殺意が湧くわ!」
「わかったって……書き直すよ」

 1億円を拾った。
 焼き芋は食べたい。
 そう思うと、ふらっとライターは現れた。
 僕がライターでその諭吉さんのコミュニティを火に放った。三国志。
 僕はそうして初めて、芋は買ってない事を悟った。
 芋が落ちてくる事を天の神々に祈りを捧げた、まぁ落ちてくる訳もないけどね。
 落ちてきた。芋。落ちてきた。
 僕が喜びのあまり芋を投げ捨てて一晩中豊作の意を表すためにフォークダンスに興じた。


「何が変わった!」
「ストーリー」
「もっと滅茶苦茶になってるだろ!
 絶対に意味がわかんないわ!!
 何だよこれ、1億円を燃やして焼き芋パーティーか!?
 で、しかもライターがふらっと現れるとか、何の擬人化魔法使ったんだよ!? あと誰と踊ったフォークダンス!?」

 僕は古びた電灯の立ち並ぶ、歴史は残る街のさびれた道を歩いていると、空から女の子は落ちてきた。

「まず死ね!
 お前はもういいから、とりあえず死ね!!」
「何でだよ!?」
「とりあえずお前の致命的な欠陥がわかったわ。
 お前、『は』と『が』が全部逆になってるだろ」
「えぇっ!?」
「そのリアクション飽きたわ!
 それから、道路の説明するより女の子を説明しろよ!」

 僕に古びた電灯と立ち並ぶ、歴史を残る街へさびれた道から歩いていると、空へと金髪の女の子が落ちてきた。

「滅茶苦茶すぎる! 何だよ『空へと落ちてきた』って!
 しかも説明金髪オンリー!?」
「これでベストセラー狙うよ!」
「ふざけんな!」
 でも面白かったのでシリーズ化するかも。
「やめろー!!」

「むぐー、むぐー!!」




 第99話 記念すべきじゃない日

「もうすぐ100話だー!!」
 星くんがハイテンションで叫んだ。
「……そだね」
 しかし、ついてくんは冷たかった。
「ん?どしたの?」
「まず、アスちゃんの誕生日は?」
 ※99話はアスちゃんの誕生日記念になる予定でした。
「作者が忘れてたんだろ」
「で、フューチアの誕生日は?」
 ※2月5日はフューチアの誕生日です。
「作者が忘れてたんだろ」
「それから、星くんの誕生日は?」
 ※3月16日は星くんの誕生日です。
「作者が忘れてたんだろ」
「だよね。ブログですら触れてないもんね」
「まぁ、それにはきっと事情が……。
 ……ん? なんで俺が自分の誕生日がスルーされたことを擁護してるんだ?」
「おかしいよね!
 さっそく文句言ってやろうよ!」
 チリンチリンと、ついてくんは呼び鈴を鳴らした。
[いかがなさいましたか?]
「何このファミレス店員のノリ……じゃなくて!
 なんで軒並みメインキャラの誕生日スルーしてんだよ! いい加減にしろよ!!」
[そーですねっ!]
「そんな平日お昼のノリはいいんだよ!」
[はいはい、わかりました。では100話記念も込めて、皆さんの願いを何か1つ叶えてあげましょう!]
「はぁ?」
「んな安請け合い誰が信じるかよ」
[ふっふーん。それなら別にいいですよ〜? 何も願いがないなら放置しますから。では……]
「ちょっと待て!今すぐ願い考えるから!!」
「タコヤキ……は星くんに頼めばいつでも手に入るから……」
「とりあえず他の奴らも呼ぼうぜ!」
[……ゲンキンな奴らですね……]

「というわけで、第1回!願いを叶えて差し上げましょうフェスタ、略してNKSMF、いよいよ開幕です!!」
「せめてもうちょっと短くて言いやすい略称にしろよ。母音ゼロじゃねーか」
 ちなみに謎の声は現在は猫に乗り移っている。でないと主人公以外に声が聞こえないので。
「ではまずは……コンセンくん!」
「……お、微妙なチョイスだな。メインでもなくモブでもなく」
「……それ一番ひどくない?」
 星ついがヒソヒソと失礼な会話をする中、コンセンくんが壇上に上がる。何の壇かはヒミツだ!
「で、コンセンくんの望みは?」
「えーっと」
「はいタイムアップですー」
「早っ!」
 星くんがツッコむが謎の声は無視した。
「さ、降りてくださいプラグ」
「プラグじゃねぇええええ!」
 コンセンくんが絶叫するが、実際コンセンくんの頭についてるのはプラグである。
「で、次は……クリームパンはいいや」
「おいぃいいいい!!」
「お前願い叶える気ゼロだろ!」
「だってこいつ願い叶ってるじゃないですか。ラジオノベルで」
「そういえば……」
「この話のコンセプトはもうすぐ100話なのに全く報われてない奴に一回くらい日の目見せてやろうぜって企画ですよ?」
「初耳だよっ!」
 周りのツッコミを無視して会は進む。
「次は、アスちゃんですね」
「はいはーい!私は誕生日を祝ってほし」
「おめでとー。はい、では次……」
「スルーすんなぁあああ!!」
 アスちゃんがキャラを崩壊させて叫ぶ。
「だったら願い変えます!
 この謎の声と決着をつける!」
「え?どゆこと?」
 意味がわからなかった星くんが尋ねる。
「女キャラなんてそう何人もいらないの!というわけで私と勝負よ謎の声!
 負けた方は3ケタ台の話すべて休む!」
「ハイリスクすぎるっ!」
「というわけでいざ勝負! そして先手必勝こ●りのつぶて!」
「アスちゃんが悪役になってる!?」
 ごく●んに出てきそうな悪役っぷりだった。
「ふっふっふ……甘いですねミルクアイス」
「だからお前はキャラを正確に呼ぶな!」
「これでどうだぁあああ!」
 そういうと謎の声は星くんの首を前足でつかまえて人質にした。
「星くんの特性は特殊ガード、つまり遠距離攻撃は効かない!
 そして接近戦ならブレイククローの達人である私が有利!
 これで私の勝ちだぁああああ!」
「こいつの悪役っぷりの方が数段上だった!
 そしてなにこのジャ●プマンガのノリ!」
「ふはははは……これで私の勝ちは決まっ……」
「えいっ☆」
 アスちゃんは可愛いしぐさとともに手榴弾を5個くらい謎の声の猫(と星くん)の方に投げつけた。
 ちなみにタ●ばくだんやヘ●ロばくだんからもわかるとおり、ポケモンにおいて爆弾はぶつりわざとみなされる。
 つまり。
「うぎゃああああああああ!」
「ぐはぁああああああああ!」
 謎の声と星くんが爆発した。
「正義は勝つ」
「どこが正義だぁあああああ!」
 ついてくんが全力でツッコんだ。

「では、気を取り直して次の方」
「つーか俺の家のリビング半壊したんだが……」
「その前に2人ともいつ復活したの?」
「続いてはファウス!」
「おい、それに願いを叶えさせたらまずくないか?」
「『神様を殺す』とか言いかねないよ」
「ハイチの大地震で被災した人のために募金がしたい」
「めっちゃ改心してた!?」
 ものすごく正しいことを言っていた。
「あとギリシャの経済危機を何とかしてほしい」
「なんで!? いや大切なのは認めるけど!」
「んー、とりあえず却下します」
「これを却下したら何が残るんだ!」
「だってこれ以上掘り上げたらキャラ崩壊が進みそうで」
「すごいメタな理由だった! というかアスちゃんの時点で止めろよ!」
「じゃ、次たまじい」
「あっさりすぎる!」
「共食い!?」
「温泉卵が食べたいのう」
「承認します」
 謎の声は温泉卵をたまじいに思いっきりぶつけた。
「ひでぇ!」
「じゃ、次は……あと誰いましたっけ?」
「最低だコイツ!」
「あー、じゃあタイフーくん」
「えーと」
「はいタイムアップ」
「テンポ重視しすぎだろ!」
「次、ガブくん」
「出番あったっけ?」
「ガブガブ」
「作者、勝手に鳴き声作りやがった!」
「何もいらないそうです」
「嘘だッッッ!」
「では最後に星つい」
「まとめて!?」
「3行以内でどうぞ」
「タコヤキが食べたい!」
 ついてくんが勢いよく言った。
「結局それかよ!」
「はい、どうぞ」
 おいしそうなタコヤキがさっと出てきた。
「早っ!何この手際のよさ!」
「いただきまーす」
「お前は少し疑えよっ!」
「おいしー☆」
「ほれ、星くんにもやりますよ」
「上から目線すぎる!」
 と言いつつ、星くんはタコヤキを食べてみた。
「おえっ!」
「味は鉛筆ですよ」
「今さら8話のギャグを持ってくんな!」
「ちなみに次回は大長編ですよ」
「そのオチも1〜2巻で使い古してる!」
「原点回帰です」
「黒歴史を引っ張ってくんなぁああああ!!」
 ※本当に次回は長編。の予定です。
「作者が保険かけんな!」




 第100話 星くんとついてくんの不幸せで幸せな一日とちょっと

 星くんとついてくんは公園に来ていた。
「ふー、疲れた」
 何のことはない、買い物の帰りである。
「星くん、疲れたー」
「それ僕さっき言ったし」
「タコヤキ食べたいー」
 ゴネるついてくんを星くんは適当にあしらった。
「なんで買い物の帰りに買い物しなきゃいけないんだよ」
「おなかすいたから」
「理由になってません。よって却下」
 と、そこへ見覚えのある栗がてくてくと歩いてきた。
「お、ついてくんじゃん」
「あー、くりマロンだー」
「……俺は!?」
 星くんがいつも通り、何のひねりもなくツッコむ。
「ナレーターが冷たい!」
「てかお前誰だっけ?」
 くりマロンが尋ねた。
「忘れたの!?
 ほし星で生まれた星型の特殊系で、神様とおばけのハーフでなぜか忘れたけど地上に落ちてきたついてくんの保護者代わりをしてる星くんだよ!」
「説明乙」
「というか忘れたのは星くんじゃなくて作者なんじゃ……」
「そういうのはいいから!」
 と、そこへまたも見覚えのあるパンがてくてくとやってきた。
「あ、クリームパンだー」
「やっほー、くりマロンについてくんに……えっと、誰?」
「扱いが酷い!
 大きなくりの木から落ちてきた大きな栗のくり族のくりマロンも中身アンコのくせにクリームパンも酷いよ!」
「説明乙」
「あと星くんの説明が一番酷いと思うよ?」
「ねーねー、口もないのにどっから声出てんの?」
「一番目のやつうぜぇ! あと最後のやつ今さら!?」
 一応テレパスという裏設定があったりはしません。
「ぼくだけスルーなのー?」
「ねーねー、どうやったらそのとんがり2つで重心保てるの?」
「少し黙ってろ!」
「逆ギレとかwゆとり乙www」
「お前は特に黙れ!」
 執拗なボケ責めに遭って息も絶え絶えな星くん。
「ねーねー、星くん」
 なぜかこのメンバーだと若干常識人に見えるついてくんが声を発した。
「何?」
「タコヤキまだー?」
「待ってたのかよ! 買うつもり全くねーよ!」
 ガーン、という効果音が聞こえそうなくらいショックを受けた顔をするついてくん。
「星くん……何様のつもりなの?」
「お前がな!!」
 ついてくんはどんどん不機嫌そうな顔になっていく。
「たこ焼き買ってくれないと、泣いちゃう」
「たこ焼き買ってあげないから、泣いてろ」
「買ってくれないと星くんの家を焼き払う」
「お前の家もなくなるぞ」
 ことごとくあしらわれてもはや涙目のついてくんは、
「……じゃあ、買ってくれないと天界に帰る」
「お、食費が浮くな。ラッキー」
 ガーン、という効果音で鼓膜が破れそうなくらいショックを受けた顔のついてくん。
「い、いいのかなー? ぼくが帰っちゃっても」
「別に。もともと一人だったし」
「い、いいのかなー? 一緒にご飯食べる相手がいなくなっても」
「別に……」
「……い、いいのかなー? 夜一緒に寝る相手がいなくなっても」
「うわぁ、星くんそんなことしてたんだ。……キモ」
「変態乙」
「寝たことねーよ! 苦し紛れに捏造すんな!」
 この状況で嘘をつかれてつい怒りのボルテージが上がる星くん。
「じゃ、じゃあ、帰っちゃうから。星くんの家のあたり一帯を海に沈めた後で天界に帰っちゃうから」
「迷惑なことすんなよ! まっすぐ帰れ!」
 ついてくんはそれを聞き、がっくりとうなだれ、とぼとぼと歩いていく。
 星くんが、あれもしかして俺若干強く言いすぎた?と思っていると、ついてくんがおもむろにこちらを振り返って、
「……いいのかなー?」
「帰れ!!」
 星くんは心から天界に帰ってもらいたいと思った。

 そして、それから20分の時が流れた。
「時間の流れ遅っ!」
 誰もいない自室で全力でツッコミをする星くん。メンヘラだ。
「黙れ」
 …………。
 黙ってみると、星くんの部屋は、というか家全体が無音だった。
「…………。静かだ」
 まさかついてくん本当に行っちゃうとは思わなかったなー、でもあそこで呼びとめたら完全に負けだしタコヤキ死ぬほど買わされるよなー、などと悶々としていると。
「爆撃準備OK!! 発射まであと5秒!」
 なんだか、さっきまで想像していた張本人のおばけの声がした。
「フォー! スリー!」
 …………。
 なんだろう、嫌な予感がする。
 というか、嫌なことを思い出した。
『買ってくれないと星くんの家を焼き払う』
 星くんの全身をだらだらと莫大な量の汗が伝う。
「ツー! ワーン! ファイヤー!!!
 
ちゅどどどどどーん!!!
 というものすごい轟音がして、星くんの家が大爆発した。
 跡形もなく消えうせる星くんの家、そして残る瓦礫の山。
「…………ついてくん?」
「やっほー、おかえり星くん」
 ついてくんはなぜかケロっとしていた。
「……カエッタンジャナカッタノデスカ?」
 ロボットみたいな棒読みになる星くん。
「やだなー、冗談だよ、じょ・う・だ・ん☆」
「……ナラナゼバクハシタノデスカ?」
「だってー、普通に帰ると恥ずかしいし、オチもつかないしー。
 ごめんね? てへぺろ☆」
「…………」
 すぅー、と大きく息を吸う星くん。
「あれ? 星くんどうしたの?」
「……消えろ」
 何の抑揚もない、怒りのみを感じさせる声。
「え?」
「二度と俺の前に顔を見せるな」
「どうしたの突然悪役みたいに」
「消えろ!!」
 星くんはショックを受けた顔をするついてくんを無視して、ゆっくりとその場を立ち去った。
 後にはついてくんが独り取り残された。

 そして、それから20時間の時が流れた。
 星くんはその間、1秒も止まらず歩き続けていた。
「……ここどこ?」
 ふと立ち止まってあたりを見回すと、なんか周りの店の看板がすべて英語で書かれていた。
「えーと……」
 星くんは英語が読めない。とりあえずあたりをキョロキョロしていると、見覚えのあるタマゴがいた。
「……たまじい!?」
「ん? あぁ、星くんか」
 たまごのおじいさん、たまじいがなぜか買い物をしていた。
 カルボナーラソースをものすごい買い溜めていた。共食いじゃないだろうか。
「ここはどこなんですか?」
「ん? オーストラリアじゃよ」
「!?!?」
 東京からオーストラリアまでの距離は、約7000kmである。
「……というかまずオーストラリアも日本も島国だぞ……」
 たまじいに聞こえない程度の声で呟く星くん。
「そんなことより、星くんは何かあったのかね?
 ついてくんとケンカしちゃったどうしようって顔をしておるが」
「めっちゃ顔に出てる!?」
 なぜかすべてお見通されていた。
「わしのとくせいはおみとおしじゃからな」
「100話目にしてまさかの新設定!」
 一応星くんやついてくんにもとくせいはあるので、たまじいにあってもおかしくはないか、と星くんは自分を納得させた。
「で、どうしたんじゃね」
「実は、かくかくしかじか」
「そうかそうか。
 要するに、ついてくんへのプロポーズの言葉を考えてほしいんじゃな?」
「大不正解だよ! おみとおしレベル低っ!」
 何一つお見通せていなかった。
「何を言うか。 わしは出た瞬間に次に出るポケ●ンの持ち物がわかるぞ」
「すごいけど著しく即効性に欠けるなそれ!」
 などと話していた、次の瞬間。
 不意に星くんは、何者かに後ろから体をがんじがらめにされた。
「一体何を……ぐはっ」
 腹に強烈な一撃を叩きこまれる。
 そこで、星くんの意識は途切れた──。

 一方、こちらはついてくん。
 天界に帰ることもできず、かといって星くんの家も爆発してしまったので、特殊系の街をとぼとぼ歩いていた。
 12時間ほど。
「はぁ……。なんだかすっかり明るくなっちゃったし……」
 ちなみに星くんと買い物に行ったのは午後4時くらいである。
「あれ? ついてくん?」
 と、不意に誰かに声をかけられた。
「あ、アスちゃん……」
 見ると、星くんの幼馴染であるアイスのアスちゃんが、経営しているアイス屋『フォーティーワン』の店の前を掃除していた。
「どうしたの?
 星くんと些細なことでつまらない意地張ってケンカしちゃった上に家まで爆破しちゃったどうしようっていううちに20時間も歩きっぱなしだよーって顔をしてるけど」
「そんな顔に出てたのぼく!?」
「えぇ。だって、私のとくせいは全知全能よ?」
「100話目で何そのスケールの大きな新設定!?」
 明らかにたまじいの上位特性だった。
「で、ついてくんはどうしたいの?」
「へ? どうしたいって?」
 ついてくんがきょとんとして聞き返す。
「星くんと仲直りしたいの? それとも、ぱふぱふ?」
「何その選択肢。もちろん仲直りしたいけど」
「ひどい! ついてくんは私より星くんを選ぶのね!?」
「えぇっ!?」
「そんな……ついてくんなんて大っ嫌い!!
 
食らえ滅びのブリザードクラッシュー!!!
 ついてくんの体をものすごい大きさの氷柱が5本貫いた──。



 ──神は言っている──ここで死ぬ運命ではないと──。



 天界に帰ることもできず、かといって星くんの家も爆発してしまったので、特殊系の街をとぼとぼ歩いていた。
 12時間ほど。
「はぁ……。なんだかすっかり明るくなっちゃったし……」
 ちなみに星くんと買い物に行ったのは午後4時くらいである。
「あれ? ついてくん?」
 と、不意に誰かに声をかけられた。
「あ、アスちゃん……」
 見ると、星くんの幼馴染であるアイスのアスちゃんが、経営しているアイス屋『フォーティーワン』の店の前を掃除していた。
「どうしたの?
 星くんと些細なことでつまらない意地張ってケンカしちゃった上に家まで爆破しちゃったどうしようっていううちに20時間も歩きっぱなしだよーって顔をしてるけど」
「そんな顔に出てたのぼく!?」
「えぇ。だって、私のとくせいは全知全能よ?」
「100話目で何そのスケールの大きな新設定!?」
 明らかにたまじいの上位特性だった。
「で、ついてくんはどうしたいの?」
「へ? どうしたいって?」
 ついてくんがきょとんとして聞き返す。
「星くんと仲直りしたいの? それとも、ぱふぱふ?」
「一番いいぱふぱふを頼む」
「もー、冗談はほどほどにしなって。
 で、星くんともう一度会いたいのね?」
「うん、そうだけど……」
「じゃあ、任せといて」
「どうするの?」
「星くんには発信機を仕掛けてあるから」
「なんで!?」
「こういうこともあろうかと」
「さすが全知全能だね!」
 アスちゃんはフォーティーワンの中の仕事部屋に入ると、ノートパソコンを起動させた。
 手もないのにどうやってとか言ってはいけないのだ。

「……おかしいなぁ……」
 ついてくんが独りで呟く。
 あの後、アスちゃんに「公園のところに星くんを連れていくから、しばらく待ってて!」と言われ、公園で星くんを待っていた。
 12時間以上。
 あたりはもはや暗くなり始めていたが、ついてくんはそんなこと気にしていなかった。
「……寒っ」
 前言撤回。
「肉まんでも買ってこよ」
 タコヤキじゃないのかよっ! とツッコんではならない。
 コンビニにタコヤキはない。
「ふー。温かいー」
 10分後、ついてくんが幸せそうな顔で肉まんを両手で持って公園に戻ってくると。
「あれ!? 星くん!?」
 見ると、星くんが縄で全身を縛られて転がっていた。
「ついてくんー! ほどいてー!!」
 星くんはついてくんに助けを求めた。が、
「肉まん食べてからね」
「ふざけんな!」
「もー、仕方ないなー」
 ついてくんは仕方なく肉まんをポケットにしまい、縄をほどいた。
「ふー、疲れた。肉まん肉まん」
 ついてくんはポケットから肉まんを取り出し、かじりつく。
「おいしー」
 幸せそうな顔で肉まんを味わうついてくん。
「……ポケット、どこにあるんだ……?」
 星くんは首をひね……れなかった。
 ただ、とろけそうなくらい幸せそうなついてくんの顔を見ていると、何となく、昨日あったことも、怒りも、すべて忘れてしまいそうだった。
「で、何だっけ?」
「何だっけじゃねーよ!」
 お前の脳みそは何があっても食べ物優先かよ! と心の中でさらにツッコむ星くん。
「あぁ、そうだそうだ。
 ……星くん?」
 ついてくんが、すまなそうな顔で、星くんの方を見る。
 何を言うのだろう、と考えながら星くんもついてくんの方を見る。
「……タコヤキまだー?」
 予想の斜め上すぎた。
「待ってたのかよっ!!」
 星くんは口では鋭く言いながらも、何となくおかしくなって、照れ笑いをする。
 ついてくんも、つられて笑顔になる。
 そこで、星くんは、謝る必要なんて、最初からなかったのだ、と気づいた。
 謝る必要なんてない。
 ただ、一緒にいて、一緒に楽しめれば。
 怒りなんて忘れてしまえるのだと……。

 その公園の反対側のベンチで、くりマロンとクリームパンは楽しそうに笑う星くんとついてくんの姿を眺めていた。
「……気持ち悪っ」

 道路を挟んで公園の反対側にあるコンビニの中から、アスちゃんがサングラスをかけてその様子をじっと眺めていた。
「あの2人、そんな関係だったとは……。
 ……冬コミでネタにできそうね」

 そして、その公園とコンビニを分断する道路で、犬を散歩させている、プラグ頭が、1人。
「……ぼくも、初期からのメインキャラだよね……?」
 わおーん、という遠吠えが、夕暮れの街にこだました。



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