Our Story's Park(7)
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「星くんとついてくん」

星くんとついてくん in むかしばなし
#1 桃太郎

No.1
 むかしむかし、あるところに、

 ほしくんとついてくんがいました。
 ある日、
 ほしくんは山へ芝刈りに。
 
 ついてくんは川へ桃を拾いに行きました。
「早く流れてこないかな〜♪」
 すると、川上の方から、
 どんぶらこ、
 どんぶらこと、
 見たこともないくらい大きな、
 
 スイカが流れてきました。
「ぼくがほしいのは桃だ!」
 ついてくんはスイカをスルーして家へと帰りました。
 
 ほしくんとついてくんはその後も芝刈りをしたり、洗濯をしたりしながら、
 いつまでもいつまでも楽しく暮らしましたとさ。
 
 めでたしめでたし。

No.2
 むかしむかし、あるところに、
 ほしくんとついてくんがいました。
 
 ある日、ほしくんは山へ芝刈りに、
 ついてくんは川へ水浴びに行きました。
 
 楽しく水浴びをしているついてくんは、ふと、
 上流の山に、もくもくと黒い雲が立ち込めていくのが見えました。
 けどまあ、特に気にしませんでした。

 それからもしばらく、水浴びを楽しんでいると、
 なんと、川上の方から、

 大津波がやってきました。
 川上の方はものすごい大雨だったのです。
 よく見ると、大津波の上で、
 まるでサーフィンでもするかのごとく、
 大きな大きな桃が躍っていました。

 ついてくんは命からがら逃げ出したとさ。
 めでたしめでたし。

No.3
 絶望した!
 いつまで経っても桃を拾わせてくれない作者に絶望した!

 ……絶望されたので、いろいろと飛ばして、

「ほしくん、この桃、割ってみようよ!」
「そうだね……」
 ようやく喋れた事に安堵したほしくんは、
 ゴ○ドアックスをかまえると、
「あ、ちょい待って、それもしかしてオレ死ぬんじゃね? もしもーし? 聞いてる?」
 桃の中から声が聞こえるのも無視して、
「ちぇいさー!!」
 桃を割った。
 パッコーンと、一刀両断しやがった。
「うぎゃー!!」
 中からコロン、と血まみれの足が出てきた。

No.4
「ほしくん、この桃、割ってみようよ!」
 ほしくんが桃を割ろうとすると、
 ぴっかー!! と桃が光りだし、
 そして、世界は光を失った。
 世界は静寂の闇に包まれ、すべての人の心を絶望という名の闇が埋め尽くす。
 音のない世界に舞い降りた私は雪だった……。
 
No.5
「ほしくん、この桃、割ってみようよ!」
 ほしくんが桃を割ろうとすると、
 ぴっかー!! と桃が光りだし、
 パカッと桃が割れた。
 中からアンパンが出てきた。
 ほしくんとついてくんは息の合ったコンビネーションで桃の両側を持ち上げると、
 えいやっと桃を元の形に戻して、
 アンパンを中に封印した。
 2人は協力して桃の両端をガムテープで止め、
 再び川へ流した。
 めでたしめでたし。

No.6
「えー? コイツが桃太郎なのー?」
「正直、育てる気なくすよなー」
「クリームパン育てたところで、鬼に金棒でぶん殴られてうぎゃー!! っていうオチだろ?」
「……ま、さっき一回そのオチあったけどね」
「っつか、あの足なんだったんだよ?」
 ぐちぐちと文句をたれやがるほしくんとついてくんですが、君たちがこのアンパンを育てるのはこの時間平面上の規定事項です。
「そーかそーか。だがな、僕たちには時間をも操る力があるんだぞ?」
「そうだ! タイムユニバース!」
 あったねそんな道具。(第85話参照)
「タイムユニバースはただ時間を巻き戻すだけでなく、現在過去未来、どんな座標に存在する時間平面でも自由自在に改変できる道具なのだよ! 実は!」
 今決めたなコイツ。まあいいけど。
「そしてそのタイムユニバースはここにありまーす!!」
 どっから持ってきた。
「ではさっそく、このアンパンの存在をこの平面上から抹消して……」
「ちょっと待ったー!!」
 クリームパンが止める。まあ当たり前だわな。
「なに?」
「そんなことしたら僕が消えちゃうじゃないか!」
「だって消すんだもん」
「だから……僕と勝負だ!
 2人が勝ったら煮るなり煮込むなり煮付けるなり好きにしていいよ!」
「それ全然自由にできてないし……。
 ま、クリームパンごときが歯向かったところで2秒で虐殺できるし、いいよ。勝負だ!」
 2対1の勝負、しかも今まで瞬殺されてきたにもかかわらず、なぜか強気なクリームパン。
「おまえ、なんか秘策があるんだな?」
「秘策なんかないよ?」
「じゃあ何を考えてるんだよ!
 このまま戦っても勝ち目はないぞ!」
「ふっふっふっ……それはどうかな?」
 不気味に笑う(キモイ)クリームパンは、一瞬でついてくんの後ろに回ると、
「クリームビックバーン!!」
 ついてくんの後ろからビームを放った。それも割と最大級で。
「何をコシャクな! スピリチュアルビックバーン!!」
 ついてくんもその攻撃を打ち消そうと(というかむしろクリームパンごと吹き飛ばそうと)ビームを放った。
 が、なんとビーム対ビームの対決は、クリームビックバーンの方が優勢だった。
「なぜ!?」
 ついてくんが慌てたが、時すでに遅し。
 クリーム色のビームはスピリチュアルなビームを消し去って、ついてくんをも飲み込んだ。
「うわあああああ!!」
 半分寝ていた星くんも、ようやく慌てだした。
「わーわーたいへんだー」
「もうちょっとマジメにやれよ!」
「……というか、なんで突然そんなに強くなったんだオマエ?」
「ふっふっふっ……」
「その笑い方マジでキモいよ?」
「そんなの決まっているではないか!」
 どーん!
「答えは……『主役補正』だ!!」
「なっ……なんだと!?」
 あまりの衝撃に後ずさる……ふりをして、頭が大変残念な子を見る目で頭が大変残念なクリームパンを眺める星くん。
「つまりだな!
 桃太郎があの貧弱な装備と糞みたいな仲間だけで鬼に大勝利できたのは、桃太郎が主人公だったからだ!」
「なんだその理論……」
「あそこで桃太郎が負けたら話的に面白くないから勝ったんだよ!! これぞまさに時間平面上の必然! ディスイズカルマ・ジャストオンザダイムプレーン! フハハハハ!!」
「……そんな長文書くならアルファベット使えよ……。
 しかも中途半端にパロるためにジャストの場所間違ってるし……」
 いよいよ本格的にこいつの馬鹿さ加減を見誤っていたなあと思う星くん。
「そしてこの物語において主役・桃太郎に対応するのはこの僕・クリームパン!
 したがって桃太郎無敵=クリームパン最強の図式が成り立つのだー!!」
 完全に勝った気でいるクリームパン。
「というわけでお前は今すぐデストローイ!!
 主役補正のかかった超クリームビックバーンを喰らえアホンダラー!!」
 クリームパンが体中の糖分を消費して究極の一撃を放った。
 音速で放たれるビームに、星くんの体が飲み込まれた。
 あたりに黒煙が巻き上がる。
「やった? やった!
 やったぞー! ついに星くんとついてくんを撃破したぞー!!」
 
「それはどうかな?」
 
 黒煙の中から声がした。
 びくっとするクリームパン。
 恐る恐る黒煙の方を向いてみると、
 
 中から星くんが現れた。
 無傷で。
「エセ主人公補正で浮かれんなモブ男。
 この物語の流れから考えてお前の死亡エンドな事くらい察しろ通行人Jが」
 星くんが吐き捨てるように告げた。
 割とダークな顔で。
「……な、なんであの主役補正のかかった一撃を喰らって無傷なんだよ!?」
「俺の特性忘れたのか?
 特殊ガードだよ、特殊ガード」
「……あ……」
 クリームパンからさっと血の気が引いていく。元からないけど。
「で?
 お前がどうしてもって言うなら、体当たりさせてやってもいいけど」
「……………………。うわあああああ!」
 クリームパンは泣きながら逃走していった。
 しかし、それを見逃すほど今の星くんは甘くはなかった。
「ボルカニックスターシャワー!!」
 火の矢があたり一面に降り注いだ。
 クリームパンはその火の矢の中を必死で逃げる。どっかへ。
「グラウンドスマーッシュ!!」
 まるで地球の内側から誰かが叩いているみたいに、地面がボコッ、ボコッ、と巨大な山を出してくる。
 その一撃が起こるたびに地面が揺れ、足止めとなった。
 しかも、5発目くらいでその山をまともに喰らい、クリームパンは宙に舞った。
「タツマキ・ハリケーン!!」
「うぎゃー!!」
 巨大な竜巻がクリームパンを飲み込み、切り刻んだ。
 もはや星くんが魔法使いになっているが細かい事にツッコんだら負けである。
 
 こうしてクリームパンを粉砕したほしくんは、ついてくんとともにいつまでも平和に暮らしました。
 2人で。
 めでたしめでたし。



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