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「ユニバース・アドベンチャー」

 第5部 惑星コンフォーコ〜ラーミア編

 ★26 Let's Skip!!
《Sociometry》

「なんにしても……よかったね」
「ああ。あのおじいさんもちゃんとプレゼントが届けられたしな」
「……で、次はどこに行くんですか?」
「次は……。
 確か、コンフォーコとか言う惑星がありますけど」
「……断れないか?」
「どうしてですか?」
「だって、どうせあれだろ!!火のように熱い惑星なんだろ!!
 そんなのマーニャだけで十分だ」
「……何でわかるんですか!?」
「図星か!?図星なのか!?!?
 コンフォーコって……とりあえず手元にあるマンガをパロディに使おうとかいう浅はかな考えがひしひしと伝わるんだよ!!」
「……この話、読者に伝わるかどうか微妙なネタばっかりですね」
「……まあ、とりあえず行こう。
 そしてさっさと次の星に行くぞ」

 そして、10分後。
「……で?
 どうするんだ?
 熱さも実はそんなでもなかった。
 何の問題もなく、ごくスムーズに武器は届けられた。
 その結果、まだ1話の容量が半分も残っているという非常事態になったわけだが?」
「……見学でもする?」
「……この集落みたいな村をか?」
 そう、コンフォーコはやはり暑さのため、あまり人間が多くは渡ってこなかったのだ。
 その結果、技術の遅れた集落が何個かあるだけになっていた。
 北地区の惑星の多くは、異常気象によって文明が発達していないらしいのだ。
 もちろん、テクノスターは例外なんだろうけど……。
「まあ、確かにそうよね……ここを見学しても、何もできなさそうだし……。
 じゃあ、もうUFOに戻ろうか」
 そうあたしが言い出した時、突然悲鳴が上がった。
 みると、覆面をつけた男たちが、集落にいた娘を人質にとって、拳銃を構えていた。
「ありったけの金を出せ!!
 でないと、こいつの命が無いぞ!!」
「……UFOに戻る?」
「何、人として最低な事しようとしてるの!?
 助けてあげるべきよ」
 そういって、あたしはずんずん男たちの方へ向かっていった。
「何でこんな事してるの!?」
「ん?何だお前……あー!!
 あの基地を壊滅させたやつだな!!」
「え?知ってるの?」
「お前のせいだ!!
 バイオレットのシベル基地が壊滅した時、俺たちは命からがらシベルから逃げ出した!
 だが、その時に持ち物を全ておいてきたから、金が全くなくなったんだ!!
 それでこんな事に……」
 どうやら、こいつらはバイオレットのメンバーらしい。
「そんなんで正当化できるわけないでしょ!!
 戯言もいい加減にしなさい!!」
「うるさい!
 お前らだって同じようなもんじゃないか!!
 ゲームを本気にして何人も撃ったとか、噂は耳にしてるんだぞ!!」
「うっ……」
 それを言われると、確かに痛い。
 けど、だからといってこいつらが正しいわけでもない。
「何よ!!
 ホテルを爆破したくせに、人を悪者にしないでよ!!」
「実際悪者だろ!!」
「違うわよ!!」
 これでは単なる罪のなすりあいだ。
 ところが、口論にあたしとその男が夢中になっている間に、ヒカルたちは他の男たちを全員取り押さえ、警察を呼んでいた。
 その男もヒカルの攻撃で気絶し、結局全員捕まった。
「……なんだったの?あれ。
 伏線かな?」
「絶対に違うな。
 要するに、単なるページ稼ぎだろ」
 とりあえず、あたしたちはコンフォーコを出る事にした。



 ★27 Lia's Poisoned Honey Class
《月夜の舞踏会》

「皆さ〜ん?」
 リアがあたしたちに呼びかけた。
 ちなみにここはUFOの中。
 UFOはフローラで整備された時に自動操縦ができるようになったので、基本的にUFOの中では遊ぶ事が多い。
「何かゲームでもしませんか?」
「いいけど……6人でやるゲームって、何かある?」
「そうですねえ……。
 トランプ、というのはどうでしょうか?」
 地球にある文化の多くは、あの鏡を通じてソルジット系にも広まっている。
 鏡から放たれた電波をシンシアの電波塔がキャッチし、それをそのままフローラへ送り、フローラから全宇宙に流れる、という仕組みになっているらしい。
「でも、伝わりにくいんじゃない?」
「……何の話ですか?」
「文だけでトランプの事書かれても、わからないと思うよ」
「だから何の話ですか?
 ……まあいいですけど。
 それなら、他に何かありますか?」
「しりとり」
「だめです。
 しりとりの話に関しては作者が嫌な思い出があるので」
「……それこそ何の事なの?
 じゃあ、とりあえず話でもする?」
「……すでにゲームじゃないですけど、別にいいですよ」
 こうして、あたしたちはかっこよく言えばフリートーク、悪く言えば無駄話をはじめた。
「ところで、リアって何でロディアさんと一緒に住んでなかったの?」
「もうそんな年でもないですしね……。
 それに、フローラ自体が隔離された環境というか、あまり部外者の立ち入りを奨励するような星ではないので」
「……じゃあ、リアって何歳なの?」
「禁則事項です」
 リアは頑なにそう言って拒んだが、セインが笑いながら言った。
「リアさんなら、20歳ですよ」
「!!
 セイン、何で簡単に教えたの?」
 リアが睨んだが、セインは平然とした表情で笑っていた。
「別に隠す事じゃないじゃないですか。
 最年長だからって誰もからかったりしませんよ?」
「そういう問題じゃないんです!」
 リアは目に涙を浮かべていた。
 ここまで来ると、セインが悪者になってしまうのも当然の流れで……。
「あ〜、セインがリアの事泣かした〜」
「泣かした〜」
「ええ!?
 これ、全部僕の責任なんですか!?!?」
「そりゃあそうだろ。
 むしろ、セイン以外に誰に責任がある?」
 まあ、それもそうなんだけど……。
「年を教えただけじゃないですか!」
「女性にとって体重と年齢は永遠に秘密にしたい事柄なんですよ」
「……でも、どうすればいいんですか?」
「……さあ?」
 ヒカルは投げやりだった。
「……すみません、リアさん」
「もういいですよ」
「……でも、何でそんなに年齢を隠したがってたの?」
 あたしは恐る恐る聞いてみた。
「いえ、少しこみ入った事情がありまして……。
 あまり過去の事は思い出したくないんですよ」
「そうなんだ……。
 ところで、今はどこへ向かってるの?」
「一番近いのは惑星タバサです。
 ただ、そこは少し問題があって……」
「問題?何なの?」
「タバサは、部外者が自分たちの惑星に入ってくるのをことごとく嫌う傾向があるんですよ。
 なので、なるべく後回しにしたいのですが……。
 いいでしょうか?」
「別にいいんじゃないか?
 届ける順番は何でもいいわけだし」
「ありがとうございます。
 では、先に惑星ラーミアへ行きましょう」
 リアはそう宣言して、その惑星へと向かった。



 ★28 Worst Crisis of Hikaru
《Power of Flower》

「ああ、忘れてました。
 少し困った事があるんですけど……」
「どうしたんだ?」
「実は、ラーミアは、女性しか入れない惑星なんです」
「……は?」
「もともとラーミアは、まだ女性差別が根強かった頃……といっても、何百年も昔の事ですけど……に、女性たちが自立できる環境を、という事で開発された星なんです。
 無人だったその星に、何人かの女性が移住して以来、その星には女性しかいません。
 男性は立ち入り禁止になってるんです」
「……でも、それだとどうやって子どもを産んでるの?」
「それは大丈夫です。
 女性の多くは、外に出て結婚して、子どもを産んで、子どもが20歳くらいになるまで育ててからから男性と離れてラーミアに戻ってくるらしいですから。
 死ぬまで家庭に縛られたくはないが、子どもは欲しい、と考える男性も多いみたいですよ」
「ふうん……。
 棲み分けができてるんだね」
 あたしは感心した。
 そんな方法、発想があるなんて、とても地球ではできないから……。
「……で?
 おれとセインはどうすればいいんだ?」
 ヒカルが苛々したように言った。
「……どうしようもないんですよ。
 UFOは1台しかありませんから」
「だったら、他の星に行って、2人で待ってればいいじゃんか」
「……近くにある惑星は、タバサだけです。
 ただ、タバサは危険なので、そこでさらに分かれたりすると、最悪つかまる事もあり得ます」
 あたしは、リアが何を言いたいのか全くわからなかった。
 ヒカルもわかっていなかったが、セインはなんだか不安そうな顔をしていた。
 最も、常に笑ってはいるのだけど。
「……じゃあ、どうすればいいんだよ?」
「簡単ですよ。
 ……ラーミアは、テクノスター指定はされていないので、検査は監視員が行うだけなんです」
「……どういう意味だよ」
「つまり、わざわざ機械で調べたりはしない、という事です。
 そして、人の目は、簡単にごまかせます」
「……まさか……」
 ヒカルの顔が引きつった。
「幸い、予備はたくさん置いてありますから、2人分くらい簡単に用意できますよ。
 それどころか、異次元倉庫に100着以上しまってあるので、好きなものを選べますよ?」
 そういって、リアは後ろの棚から、あるものを取り出した。
 それは、オレンジ色の、派手なフリフリのスカートだった。
「……冗談ですよね」
 セインが早口に聞いた。
「私が冗談を言うように見えます?」
 ふとあたしが辺りを見回すと、カナとサエがにやにやしていた。
 あたしも、今後の展開を想像したら、自然と笑みがこぼれた。
 そしてふと気づくと、ヒカルとセインは、あたしたち女性陣4人に、完全に包囲されている状態となっていた。
「いや、倉庫の中に隠れていればいいんじゃないのか?」
 ヒカルが聞いた。
 一見冷静を装っているが、その顔は引きつったままだ。
「……でも、もし見つかったら大変ですし、倉庫も異次元空間ですし。
 3日ほどいる予定ですから、食べ物を用意するのも大変なんで……ね?」
 あたしたちはじりじりと2人に迫った。
「で……でも、バレるに決まってるだろ?
 口調とか、名前とか、いろいろで……」
「ヒカルなら女でも問題ないでしょう。
 もともとプロットでは女でしたし。
 それに、最近は男言葉を使うヒロインが人気ですから」
「……あの〜、僕はどうすれば……」
「大丈夫ですよ。
 あなたのキャラクターのモデルは女 装が似合うあの執事ですから。
 何でも似合うと思いますよ☆
 ……というわけで……」
 2人の悲鳴がUFOに響いた。



 ★29 We Entry to Larmia
《なんてったって☆伝説》

「……ラーミアに来るのは初めてですか?」
「はい」
「わかりました。
 では、女性かどうかの検査をするので、ここに並んでください」
「はい」
 あたしたち6人は、ラーミアの入星検査を受けている。
 普通の星は入るのにパスポートすらいらない(都道府県的存在だから当たり前)のだが、この星は性別検査が必要になっているのだ。
「お名前は」
「ルナ、サエ、カナ、ヒカル、リア、それから……」
 そういってリアはセインをちらっと見た。
「……ハーマイオニーで」
「……『で』?」
「いえ、ハーマイオニーです」
「わかりました。
 では、ラーミアでごゆっくりお楽しみください・
 ……あ、それから」
 あたしたちがさっさと行こうとしたので、監視員の人が呼び止めた。
「今日の夜にはラーミア創立410周年記念のパーティーがあるので、ぜひ出席してくださいね」
「わかりました」
 あたしたちはまっすぐホテルに向かった。
 そして防音機能のついている部屋を選択し、扉をゆっくりと閉めた。
「……って!!
 何で僕の偽名ハーマイオニーなんですか!?」
 ぱたん、という扉が閉まる音がしたまさにその瞬間、セインが勢いよく口を開いた。
「だって、その方が面白いじゃないですか」
「……ていうか、まずこの服をどうにかしてほしいんだが。
 もう少しおとなしい感じのは無かったのか?」
 ヒカルが不機嫌そうな顔……というか、不機嫌そのものの顔で言った。
 セインが着ている……じゃなくて、着せられているのは、胸元が大きく開いた白のキャミソールと、水色のミニスカート。
 ヒカルは黒いブラウスにフリルのついたオレンジ色のスカートを着ている。
「ていうかそもそも、お前ら全員デニムだろ。
 何でおれたちだけスカートなんだ?」
「だって、2人がデニムとかだったら、普通にバレちゃうじゃない。
 あえて女性らしさを表現できる服装の方がバレにくいでしょ?」
 あたしが意見すると、2人は黙ってしまった。
「本当ならメイド服とかにしようかと思ったんですが、さすがに怪しまれるので……」
「あの〜、僕たちの事着せ替え人形かなんかと間違えてませんか?」
「あら、違ったんですか?」
 リアの言葉を聞いて、あたしは、本当にロディアさんとリアは親子なんだな、と実感した。
「……で、早く武器を届けてここを出たいんだが」
「残念ですが、それはできません。
 ほら、記念パーティーがあるって言ってたじゃないですか?
 この星のリーダーも、みんなあのパーティーの準備で忙しいんですよ。
 なんせ、10年に1度、ラーミアの力を総結集して催されるパーティーなんですから。
 今日だけは、男の方も普通に入れるみたいですし……」
「え?」
 ヒカルが声を出した。
「……入れるのか?普通に」
「いえ、今日の夜までですよ。
 私たちは明日までいるんですから、そのままだと2人だけ強制的に追い出されますよ?」
「そうか……。
 って!
 男が来るのか!?」
「それがどうかしたんですか?」
「目に見えてるんだよ!!
 どうせあれだろ!?
 ヒナ祭り祭りの再来なんだろ!?!?
 どうせセインかおれに鉄ヲタがまとわりつく展開になるんだろ!?」
「……どういう意味ですか?」
「そうなんだろ!?
 どうせ明日のタイトルは『Love's Magical Sein Lun Lun』なんだろ!?」
「いえ、たぶんあさってですよ」
「どっちでも一緒だ!!
 大晦日にそんな話をするな!!」
 こうして、パーティーの時間は刻々と近づいていた。



 ★30 Party of The Larmia
《Oh! My Honey》

「……では、これよりラーミア創立410周年記念のパーティーを行います。
 なお、男性の方は夜10時までにお帰りください。
 明日の朝3時までパーティーは行われるので、女性の方はそれからも参加する事ができます。
 では、皆さん、ごゆっくりお楽しみください」
 司会の人がそう宣言すると、会場のあちこちから歓声が上がった。
 このパーティーは3部に分かれていて、第1部は長々とした祝辞とかが読まれる式典、第2部が男女ともに楽しむパーティー、第3部が女性だけのパーティーになっているらしい。
 だいたいの人は第2部から出席するけど、第1部から出ている人はかなり退屈していたので、第2部の始まりを待ちわびていた。
「……で?おれは何をしてればいいんだ?」
 ヒカルが不機嫌そうに言った。
 ちなみにヒカルとセインはさっきの服装のままだけど、あたしたち女性陣4人もスカートやワンピースのような華やかな服装に着替えている。
「別に、どこに行ってても大丈夫ですよ。
 あ、それから、自分称だけは私に直しておいてください。
 口調はそのままでもツンデレっぽくて不自然ではありませんが、自分称くらいは直さないとおかしいですから。
 ……セインもですよ☆」
「……ツンデレって……できれば避けたいんだが……。
 どうすればいいんだ?」
「そうですね〜。
 だったら敬語はどうですか?
 女言葉はさすがに抵抗があるでしょうから……」
 リアが提案した。
「わかった……じゃなくて、わかりました」
「そんな感じですよ☆」
 リアが拍手した。
 ヒカルが席を離れると、カナがあたしの肩を小突いた。
「ねえ……つけてみない?」
「え!?どうして?」
「……だって、なんだか面白そうじゃない?
 ヒカルの事だから、絶対愉快な事件に巻き込まれるって」
 本人にとっては愉快どころか超絶に不快なのだろうが、確かに一理あったので、あたしとカナはヒカルをつけることにした。

「……くそっ……なんでこんな格好を……」
 ヒカルは歩きながら毒づいていた。
 もちろん、誰にも気づかれないような小さな声だったけど。
「全く……別にこんなところ来なくてもいいのに……いたっ!」
 俯いて早足になっていたヒカルは、誰かとぶつかってしまった。
「あ……すみません……」
 そういってヒカルは足早に立ち去ろうとしたが、その人はヒカルの肩をがっしりつかんで目の前に引き戻した。
「あなた……お名前は?」
 その人は、10代後半の男の人だった。
「……ヒカルですけど……」
 ヒカルはとてつもなく不安そうな顔をしていた。
 おそらく、これからの展開が読めているのだろう。
「どうかしたんですか?」
「……あなた、恋人とかいます?」
「!!」
 ヒカルは目を見開いた。
「さっきぶつかった時に思ったんです。
 この瞬間に出会ったのは運命。英語で言うとデスティニー。ですから僕、あなたの事が……」
「……やめてください……」
 ヒカルは必死に逃げようとしたが、慣れない服装のため思うように動けない。
「……お願いです!
 今夜9時から行われるメインイベントのダンスパーティーで、一緒に踊っていただけませんか?」
「……え……えーと……」
 絶対嫌です。ヒカルはそう言うのを必死にこらえていた。
「……あ、私、用事があるのでこれで……」
「何があるんですか?
 終わるまで待ちます、ダンスには間に合わないんですか?」
「………」
 その人からすれば好意なのだろうが、ヒカルからすれば果てしなく迷惑だ。
「あ、私……踊る相手が決まってるんです」
「……誰ですか?」
 ヒカルは名案を思いついたと思ったのだろうが、その人は意外にしつこい性格のようだった。
「その方に比べて僕の何が劣っているんですか?
 教えてください、できればその方に会わせてください!」
「………」
 ヒカルはひたすら困っていた。



 ★31 Love's Magical Hikaru LunLun
《Oh! My Honey》

「……放してください」
「理由を聞かせてください」
「放してください!」
 ヒカルはそういってその人の静止を振り切り、逃げ出した。
 もともとヒカルは運動神経はいい方なのだが、さすがに服装がミニスカートでは思いっきり走る事もできず、動きにくそうだった。
 そのため、その人に追いつかれはしないものの逃げ切る事もできない状態になってしまっていた。
「……こうなったら……!」
 ヒカルは通路を急いで曲がると、人ごみの中を直進した。
 大勢の人の中に紛れて、隠れるつもりだったのだろう。
 ところが、ヒカルのあまりのスピードに人ごみの方が両側に避けて道を作ってしまい、逆に通った道がわかりやすくなってしまった。
 そこでヒカルは作戦を変えて、今度は誰もいない廊下を全力疾走し始めた。
 人のいない廊下なので、すでにスカートが捲り上げられているのとか全く気にしていない。
 そのためスピードはさっきまでと全く違い、その人を引き離せる……はずだった。
 ところが、その人も周りに人がいないとわかると遠慮をやめ、突然スピードを上げ始めたのだ。
 2人とも目にも止まらぬ速さで走っていて、もしここに誰かが現れたら瞬時に跳ね飛ばされるだろうというくらいの勢いだった。
 おそらく、普通の人は自転車でも抜けないだろう。
「ついて来ないでください……!!」
 ヒカルが言ったが、あまりの速さで大部分はかき消されていた。
 とはいえ、何とかその人も聞き取れたらしかった。
「ダメです!
 僕は今まで……こんな感じで10人以上の女性に嫌われてきたんです!
 なので……本当に、何がいけないのか、知りたいんです!!」
 なんだかすごく可哀想になってきたけど、だからといってヒカルが止まってあげるわけもなかった。
「他の人をあたってください!
 私はそういうアドバイスできるほどの経験なんてないので!!」
 ……まあ、実際女性になって8時間弱だし。
「そんな事言わずに!
 あなたは、僕にいいアドバイスをくれる気がするんです!!
 僕の本能が告げています!!」
 ……役に立たない本能……。
「今すぐ捨ててください!!
 警察を呼びますよ!!」
「……僕は何にも悪い事はしてません!!」
 言われて見れば、確かにそうだ。
 そこでヒカルは最終手段として、たまたま通路近くにあった女子トイレに飛び込んだ。
「待ってください!ヒカルさん!!」
 その人は悲痛な面持ちで必死に呼びかけたが、ヒカルは無視した。
 その人はそれから10分くらいでいなくなったんだけど、ヒカルはそれから20分くらい閉じこもっていた。
 ヒカルにとっては当然初めて見る光景だったので、その間中そわそわしていて、それはそれで滑稽だったんだけど、30分もするとさすがに飽きたので、あたしは呼びに行く事にした。
 ちなみに、この話の5行目からの描写は、全てリアから借りた監視用のUFOからモニタリングしていた。
 誰もいない廊下には隠れるところもないし、だいたい隠れてたら追いつけないし。
「おーい!ヒカルー!
 いつまで隠れてるのー?」
 あたしがそういって呼び出すと、ヒカルは顔を真っ赤にして個室から出てきた。
「…………」
「ん?
 どうかしたの?」
「……どこで見てた」
「え?」
「……どこで見てたかって聞いてるんだよ!!」
 ヒカルの強烈な右フックが炸裂した瞬間だった。
 あたしは、ヒカルがれっきとした男性である事を改めて思い知らされた。

「……にしても、面白かったね〜。
 ヒカルの女 装。またやってよ」
「ぜったいに嫌!!」
「……あら、でもセインのも面白かったですよ?
 あ、録画してあるので観ますか?」
「観る観る!」
「私は、ヒカルの方が観たいんだけど……」
 来年、セインの分岐ルートをやるかどうかは未定だけど……。
「一ヶ月間ありがとうございました!!」



 ★32 Go to The Final Planet
《空色デイズ》

「……で?次はどこへ行くんだ?」
「えーと……次はですね……」
 リアが言葉を続けている途中に、突然着メロがUFO内に鳴り響いた。
「あ、ちょっと待ってください。
 ……もしもし……あ、お母さん?」
 どうやら、相手はロディアさんのようだった。
「今は……ラーミアを出たところだけど……え!?
 ……じゃあ、そこへ……ええ!?
 ……あ……そうなんだ……わかったわ……じゃあ、伝えておくね」
 リアはそういって電話を切ると、あたしたちの方に向き直って、こういった。
「ダークネスの本拠地の場所がわかりました!」
「ええ!?」
 あたしたちは全員揃って大声を上げた。
「何なんだ、その新年早々の急展開は!?
 ていうか、これからどうするつもりなんだ?」
「……ダークネスを倒せるので、もう武器を届ける必要は無いそうです。
 場所は南地区の惑星ローネア。
 今も警官がそこへ向かっているので、今すぐシンシアへ戻れと、ソルジット警察から命令が来たという事です」
「……無視しろ」
 ヒカルが過激な発言をした。
「だめですよ。
 今すぐシンシアに戻ったほうが、確実に早く帰れますよ?」
「確実じゃないだろ。
 ソルジット警察はそんなに頼れる組織なのか?」
「……まあ、そんなでもないですけど……。
 でも、あまり反抗すると、逮捕されますよ?」
「……それでもいい。
 ここまで来て、いまさら手をくわえて見てるだけなんて、できないだろ?」
「……そうね」
 ヒカルの力強い言葉に、あたしも賛同した。
 今まであたしたちは(実時間で)1ヶ月間、ずっと一緒に戦ってきた。
 某リアルな鬼から某マスコットキャラまで、暑い星も寒い星も、一緒に攻略してきた。
 なのに、最後の最後で警察に全てを託すなんて、できるわけがない。
「やめた方がいいですよ。
 ロディアさんだって反対してたんでしょう?」
 セインが何とか流れを変えようと、リアに聞いてみた。
 しかし、リアの答えは芳しくなかった。
「実は……お母さんは、『私はシンシアに戻れなんて思ってないわ。
 ソルジット警察はフローラの事をあまり良く思ってないから、鼻を明かしてやって』と……」
 あたしは、ロディアさんのやりそうな事だと思った。
「……あれ?
 でも、警察ならテクノスターとか歓迎してるんじゃないの?」
「それが、そうでもないんですよ。
 警察は、インターネットが犯罪の温床になっているからと、フローラの壊滅を狙ってるんですよ。
 もちろん表向きにはしてませんが。
 ソルジット警察は、意外といろんな組織と対立してるんですよ」
「……それなら、ますます信用できないんじゃないのか?」
「……まあ……そうですけど……。
 でも、さすがにソルジット系全体に関わる事で、ミスなんてしませんよ。
 この件に関しては、ソルジット警察はかなり慣れていますから」
「……だが、どっちにしたって、考えを変えるつもりは無いぞ?
 警察には、頼らない。
 ……みんなだって、その方がいいだろ?」
「……あたしはその方がいいわ。
 ダークネスは、私たちの力で倒しましょうよ」
 あたしはそう意見した。
「あたしも、ヒカルに賛成かな。
 警察はきっと大人数で行くから、逆にやられやすいと思うの。
 あたしたちだけで行った方が、絶対に早く勝てるよ」
 カナも賛成してくれた。
 あたしたち3人はサエの事をじっと見た。
「……わかったわよ。
 私は、警察とはあんまりもめ事は起こさない方がいいと思うけど……。
 ルナたちがその気なら、それでいいわよ」
「……僕も、皆さんに賛成です。
 どっちにしたって、4対2では勝ち目がないですし。
 ね、リアさん?」
「……わかりましたよ。
 なら、もういいです」
 こうして、あたしたちは最後の冒険に出発した。
【第5部 惑星コンフォーコ〜ラーミア編 完】


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